今週の注目トピック
Satoshi Miyazakiより
今週のニュースレターTech編では、Ethereum 2.0の有価証券該当性に関するCFTC委員長の見解や、ChaintopeのTapyrus公開に関するニュース、MakerDAOのMulti Collateral DAIへの移行について、取り上げています。List編と合わせて、ご覧ください。
Section1: PickUp
●米CFTC委員長、Ethereum 2.0のPoSによる通貨が有価証券に該当する可能性ありと指摘
米国において、CFTC(商品先物取引委員会)はコモディティおよびデリバティブ市場を監督するもの。一方、SEC(証券取引委員会)が有価証券を監督するという分担になっている。
このほどCFTCのHeath Tarbert委員長が、PoS(Proof of Stake)ベースの通貨・トークンが有価証券に該当する可能性があるとの考えを示した。PoW(Proof of Work)では、分散的にマイナーがネットワークを維持するのに対して、PoSでは、バリデータが保有する通貨を一定期間ロックアップした上でネットワークを維持し、この保有割合に応じて、ブロック承認の割合が決められる。こうしたStakingメカニズムを利用した場合に「Howey Test」にてらした有価証券に抵触する可能性があるというもの。(Howey Testについては本Newsletterの第1号で紹介)
有価証券該当性については、これまでも、いったん有価証券に該当すると考えられるものが、コモディティ商品への分類に変わる場合があること、あるいはその反対もありえるという見方を示してきた。例えば、SECおよびCFTCは、現在のEthereumで通用しているETHについては、証券ではなくコモディティであるという見解が示されていた。
Ethereumのスケーラビリティ向上にむけた大型アップデートにむけて動く中、証券性が再び論点として浮上した形だが、これまで当局はPoWベースの暗号通貨について考察を重ねてきたのに対して、PoSベースの暗号通貨については、なお検討が必要と見られる。加えて、PoSの機構はPoWと比べて複雑かつ現在開発進行中であり、SECやCFTCからのガイダンスがすぐに示されることは期待しにくい。こうしたことからも、Ethereum2.0をはじめとするPoSベースの暗号通貨については、今後も注視していく必要がある。
●Chaintope、ガバナンス問題を解決したパブリックブロックチェーン「Tapyrus」をオープンソース提供開始
パブリックブロックチェーンは、意思決定を主体的に行う管理者がいないために、機能追加や事故発生時の救済が困難というガバナンス上の問題を抱えている。そのため、企業利用では、ネットワークへの参加を限定し単一もしくは複数の管理者で意思決定を行うタイプのチェーンが採用されやすい傾向がある。
Tapyrusの提唱するガバナンスの仕組みを見てみると、 ブロックチェーンを適用するドメインを明確化し、ドメインの利害関係者によって複数のフェデテーション (調整役) を構成する。ブロック生成に用いられるコンセンサスアルゴリズムは、PoWではなくフェデテーションによる多重署名としている。これにより、ばらつきのない安定したトランザクションの承認を担保するとのこと。
こうしたガバナンスの特徴は、あらかじめ選定された複数の調整役によって運用されるため、機能変更・追加の意思決定をスムーズかつ負荷コストを最小限で可能であるとする。また、ネットワークを支える不特定多数の参加者がデータの正当性を検証するため、特定の調整役の意思によるデータ書き換え等の不正が防止可能とのこと。
Tapyrus のソースコードは、エンジニアがオープンソースで提供されるほか、今後は業界毎に異なるニーズに応えるべくTapyrus 上に各種拡張機能(Colored Coin、Oracleによるデータ提供のサポート、Atomic Swap、Extension Chain)を追加予定としている。アプリケーションについても、Accumulatorを用いることによって、大量のモノの移動(大量の取引量)をストレージやスループットの問題を解決して管理するトレーサビリティアプリケーション「Paradium」等のプラットフォームを近日公開予定であり、引き続き今後の展開に注目していきたい。
● MakerDAO、Multi Collateral DAIへと移行
2019年11月18日、The Maker Foundation Interim Governance Facilitatorの投票結果により、Multi Collateral DAI(MCD)への移行が実施され、Ethereumメインネットでの稼働を開始した。
今回の移行により、EthereumとBAT(Basic Attention Token)をコラテラルにして、DAIを発行することが可能になる。また、従来のSingle-collateral DAIは、名前を「Sai」に改められることになった。
Makerによると、MCDへの完全移行を行うため、長期的にはSaiは停止される予定となっている。一方で、詳細な移行スケジュールについては現時点では公表されておらず、最低でも数ヶ月かかるとする見られている。MyCryptoのMediumから、今回の移行に関してDAIホルダー向けに早急な対応を行うよう助言する記事が公開されるなど、各所に影響が出そうだ。
Section2: ListUp
(リンクはこちら)
1. Bitcoin(「ビットコインの新アドレスフォーマットBech32の潜在バグについて」など)
2. Ethereum(「Mastering Ethereumの日本語版が11/30に出版」など)
3. Bitcoin/Ethereum以外(「ZcashのSaplingへのThreshold Shielded Transactions適用について」など)
4. 統計・リスト(「Tetherの発行量」など)
5. 論考(「ScalingBitcoinで発表された「Optical Proof of Work (oPoW)」が、Arxivの暗号・セキュリティ分野で#1論文に選出」など)
6. 注目イベント
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