今週の注目トピック
Satoshi Miyazakiより
エンドユーザー向けの資産管理ソリューションとして、モバイルウォレット、ブラウザ組み込み型のソフトウェアウォレットに加え、スマートフォンそのものに組み込まれたハードウェアのウォレット開発に関する動きも活発になっている。新たなAMLソリューションやDeFiプロトコルのペーパー公開など、金融に近しい領域における研究者や企業によるR&Dも引き続き活発に行われている。
Section1: PickUp
●韓国サムスンのブロックチェーンスマホ、独BitWalaにおけるビットコインバンキングアプリなど、スマホとのインテグレーションに新たな動き
サムスンは、仮想通貨ウォレットおよびdAppsが内蔵する新型スマホ「Galaxy S10」を発売中。当初EthereumおよびERC20トークンのサポートから始まり、その後Bitcoinが追加された。このたび、BNB・TUSD・MKR・USDCへの対応を新たに追加が発表された。これにより、対応銘柄は計33種類となる。
あわせて、サムスンはカカオ独自通貨Klaytn対応のスマホ「KlaytnPhone」リリースを発表した。Klaytnは、SNS大手カカオ社の子会社「GroundX」による独自仮想通貨であり、「KlaytnPhone」にはKlaytnトークンの専用ウォレットとブロックチェーンアプリが内蔵される見込み。
昨今、スマホと暗号通貨の距離が急速に接近しており、例えば独BitWalaは、独ソラリス銀行と提携を通じて、スマホのウォレットと銀行口座を接続したモバイルバンキングアプリをローンチした。これは、「Bitcoin Banking App」と呼ばれ、Bitcoinウォレットとバンキング機能を1つのアプリで可能とする。Bitcoinのウォレット機能では、アプリを通じてBTCを取引できるほか、Bitcoinを友人や家族に転送するためのP2P機能を備える。オンラインバンキング機能では、銀行口座から直接ビットコインを売買できる。さらに、ビデオ識別機能を使用しており、EU居住者であれば、数分以内に口座を開設できるとのこと。
暗号通貨であるか法定通貨であるかを問わず、日常生活の中でシームレスに利用できる時代が近づこうとしており、こうした動きが日本で見られるようになる時代も近いかもしれない。
●ブロックチェーン分析のElliptic、アジア市場拡大へシリーズBを調達
アンチマネーロンダリング(AML)市場は2019年時点では約7.6百万米ドル、2024年には約326百万米ドルを突破すると予想されている。暗号通貨においても、当局規制強化と高度なセキュリティ対策の需要が拡大している。
Elliptic社(2013年設立)は、暗号通貨分野のAMLに特化し、ブロックチェーン上のAMLソリューションを開発している。このたび、「SBI AI&Blockchainファンド」を通じて2300万ドル(約24億3800万円)を調達したことが発表された。
Elliptic社のソリューションは、機械学習を活用して、ブロックチェーン上の不審なトランザクションを追跡し、発見するもの。取引に関連するアドレスのリスクを0点〜10点の11段階でスコアリングした上で、効率的な取引モニタリングと、資産流出発生時の経路捕捉や犯人特定を行うソリューションを提供する。
SBIグループとしては、仮想通貨取引所・カストディ事業などグループのAMLを強化の狙いがあるとみられる一方、Ellipticとしてはアジア・日本市場拡大のほか、Libraや中銀デジタル通貨むけの監視サービス開発に利用するとみられる。今後、デジタル通貨のより広範な普及に向けて、重要なプレイヤーになり得ると想定される。
● 暗号資産投資ファンドParadigmより、Yield Protocolのドラフトペーパーが公開される
2019年9月5日、暗号資産ファンドParadigmに所属するDan Robinson氏より、オンチェーンのレンディングプロトコルである「Yield Protocol」のドラフトペーパーが公開された。
Yield Protocolは、担保資産を元手にyTokenを債券として発行し、将来の償還日に、ロックされた担保資産を受け取ることができるオンチェーン上の契約である。
Yield Protocolのユーザーは、Ethereum上にETHをデポジットし、4つの変数(ターゲット資産、担保資産、償還日時、担保条件)を設定することで、repo(repurchase agreement、買い戻し契約)を発行し、yTokenを受け取ることができる。このとき、ERC20トークン(DAI、ETH、USDC)の価格など、オンチェーン上のターゲット資産(=参照先のオラクル)の情報をトリガーとして償還のコントラクトを実行するため、ゼロクーポン債のように活用することができる。
ユーザーは、こちらのyTokenを売買することで、レンディングや、借り入れと同じような効果を、疑似的に享受することができる。また、用途に合わせて、Uniswapのような他のDeFiとyTokenを併用するユースケースについてもペーパー内で述べられており、今後Yield Protocolを起点としたプロダクトが、DeFiエコシステム内でどのように使われていくか、注目が集まるだろう。
Section2: ListUp
(リンクはこちら)
1. Bitcoin(「二者間CoinJoinへむけたSNICKER (Simple Non-Interactive Coinjoin with Keys for Encryption Reused) が提案される」など)
2. Ethereum(「匿名性高めるSemaphore、MicroMixミキサーへ実装へ」など)
3. Bitcoin/Ethereum以外(「Telegram、ブロックチェーンTONの公開テストを開始」など)
4. 統計・リスト(「各取引所によるIEOのROI比較」など)
5. 論考(「「インターネット×ブロックチェーンの先にあるものとは?」慶大・村井純教授から学ぶ“テクノロジーの大局観”」など)
6. 注目イベント(「International Summer School on Security & Privacy for Blockchains and Distributed Ledger Technologies」など)
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