LayerX Newsletter for Tech (2019/10/07–10/13)

Issue #28

今週の注目トピック

Satoshi Miyazakiより

今週は、先週にかけて行われたEthereumの年次大会であるDevcon Vにて話題になった主要トピックを振り返りつつ、ChainlinkとIntelによって発表されたTEEと分散オラクルを使ったTrusted Computation Frameworkの取り組みについて、また世界中で多くの利用者を抱えるメジャーなビットコインウォレットクライアントである、ElectrumのLightning Network機能対応について、取り上げています。ぜひ、List編と合わせてご覧ください。

Section1: PickUp

大阪で開催されたDevcon Vの主要トピックを振り返る

TEEと分散オラクルを用いてTrusted Computingを行うTrusted Computation Framework(TCF)がIntel・Chainlinkより発表

  • ブロックチェーン上のスマートコントラクトを用いて行うことによって、マルチステークホルダーによるトランザクション契約の執行を、共有の計算プラットフォーム上でコントラクトを確実に実行・セツルメントした上で、実行結果を改ざん困難な形で格納できる。実行・検証に際して取引相手を信頼する代わりに、IoTや市場などデータ・ドリブンでマルチステークホルダーの関わるビジネスプロセスを自動化できる。

  • コンソーシアムを組成した企業群が、パブリックチェーンを用いてコラボレーションする上では、コントラクトのロジック・プロセスは共有する一方で、IoTやGPSなどのトリガーデータおよびオフチェーン計算過程は競合から秘匿できることが望ましい。

  • こうした課題に対応すべく、ChainlinkとIntelは、企業が生データをプライベートな形でスマートコントラクトへ利用できるオラクルソリューションを開発した。TEE(Trusted Execution Environment。Intel SGXなどが代表的)によるオフチェーン計算を組み合わせ、エンタープライズ水準のプライバシー・スケーラビリティを実現するソリューションとして発表したのが、「Trusted Computation Framework(TCF)」。

  • Chainlinkは、ブロックチェーン上のスマートコントラクトへ現実世界のデータをインプット(オラクル)として繋ぐミドルレイヤーとして働く(Chainlinkの概要についてニュースレターIssue #13で紹介した記事はこちら)。このとき、ChainlinkはTEEを用いてオフチェーン計算を行い、計算結果をブロックチェーンへ渡す。高ボリュームのトランザクション処理や、EVMでは捌けない複雑な処理をTEEを用いてオフチェーンで行い、結果のみをオンチェーンに格納するという流れになっている。

  • このようにChainlinkとTEEを組み合わせることによって、オンチェーンの処理を軽減するとともに、データソースをオンチェーンのスマートコントラクト側が知ることなく処理可能であり、ブロックチェーンに対するセキュリティ層としてTrusted Computation Framework (TCF)を構成する。

  • このTCFは、EEAで定めたTrusted Computingスペックを実装したものであり、これを先日発表された「Hyperledger Avalon」としてプロダクト化している。一連のTrusted computingのコンセプトには、スペインの銀行Banco Santanderも参加しており、同行はConsolidated DataをTrusted Computingで行う方法を自社のセキュリティポリシーに組み込むべく、データセキュリティの文脈で着目しているとのこと。

  • TCFの適用は、保険やサプライチェーンの文脈のユースケースが想定されている。保険請求のトリガーとなるデータフィードを提供しながらも、IoTの詳細な基礎データやその算出ロジックを秘匿した上で、保険請求実行を起動することができる。これにより、自動車運転のメトリクスに関する日次レポートのように、従来以上にデータ計測の頻度を高めることが可能となり、動的な保険料ディスカウントをローコストかつプライバシーを保護したまま処理可能になる。

  • サプライチェーンの文脈では、計算エンジンがトレードコントラクトを処理する上でIoTやGPSなどのデータやロジックを秘匿することによって、競合からのデータ盗難やフロントランニングを回避できる。

  • 今後、銀行・保険・サプライチェーンをはじめとしたエンタープライズ分野で、スマートコントラクトを活用した業務プロセス変革・新規サービス開発を行う上で、エッジコンピューティングとの融合も想定される。その場合にIoTやGPSが取得した機微情報の取り扱いをセキュアに行うことが不可欠であり、TCFのような技術開発の進展に期待したい。

Electrum Walletが次にアップデートで、Lightning Network機能に対応予定

  • 2019年10月14日、ビットコインウォレットを提供するElectrum Wallet(現行バージョン: v3.3.8)が、来るv3.3.9のアップデートにて、Lightning Networkでのペイメント機能に対応予定であることが、公式Twitter上で発表された。Electrum Walletは、2011年よりライトクライアントのBitcoinウォレットを提供していることで知られており、コアユーザー向けの豊富な機能を備えているため、世界中から人気を集めている。

  • Lightning Networkに対応するメジャーなウォレットクライアントは未だ数少ないため、今回のアップデートは多くの人にとって、はじめてLNに触れるきっかけとなる可能性がある。

  • ツイートによると、現在独自のLNの実装が、Electrumのマスターブランチに上がってることが報告されている。また、こちらはPythonで書かれていることも明らかになっている。

  • 今年6月の時点で、ElectrumのファウンダーであるThomas Voegtlin氏により、LNが実装予定であることは既に明らかにされていた。一方で、6月末に、LNのメジャークライアントで脆弱性が発見され、その全容についての公開が9月末に行われる予定であったこともあり、リリースのスケジュールに何かしらの影響があった可能性がある。

  • 仕様の詳細については、今後のアップデートにより、公式から発表される予定となっているため、引き続き注目していきたい。

Section2: ListUp

(リンクはこちら

1. Bitcoin(「DTCを用いたP2PのBitcoinトレード」など)

2. Ethereum(「DEXのスケーリングにzkSNARKs用いるオープンソース実装OpenZKP」など)

3. Bitcoin/Ethereum以外(「Verifiable Credentials Use Cases」など)

4. 統計・リスト(「Chaincode Residencyカリキュラム」など)

5. 論考(「Blockchain for Digital Identity: The Decentralized and Self-Sovereign Identity (SSI)」など)

6. 注目イベント

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