今週の注目トピック
Satoshi Miyazakiより
今週は、Baltic Honeybadgerのイベントにて発表された、SquareによるBTCPayへの支援のニュースや、金融商品のデジタル化の領域において、ConsenSysより発表されたCodeFi、そして最先端のDEXプロジェクトとして発表されたDolomiteを取り上げています。
Section1: PickUp
●Square Crypto、Bitcoinオープンソースプロジェクト「BTCPay Server Foundation」への支援開始を発表(Baltic Honeybadger 2019現地レポート)
先日(9/14~9/15)ラトビア共和国のRigaで開催されたBaltic Honeybadger2019に参加してきた。その中で一際ホットな話題となったのが、BTCPay Server Foundationに対するSquare Cryptoからの助成金提供の発表だった。
BTCPay Server Foundationは、オープンソースの暗号通貨決済ソフトウェア「BTCPay Server」を手がけているプロジェクトである。BTCPay Serverは2017年にNicolas Dorier氏によって創設された。外部の管理者を必要とせずに、暗号通貨による支払いを手数料や仲介者の関与なしで実現することができる。例えば、オンラインストアの決済・クラウドファンディング・請求・寄付などが可能。Lightning Networkにも対応している。
今回BTCPayServerに対する助成金支援を表明したSquare Cryptoは、オープンソースのBitcoin開発にフォーカスしたSquareの一部門。Square自身も決済サービスを提供する企業だが、「マネーの未来への投資」として、変化に適応することを志向している。Jack Patrick Dorsey CEOも、「Bitcoinがインターネットにおけるネイティブ通貨になる」「通貨として機能していくべく、もっと使いやすくてアクセスしやすいものにしていく必要がある」と主張している。
BTCPayServerに対しては、Square Cryptoに続いて、DG Labからも寄付が発表された。DG Labは、BitcoinフルノードとBTCPayServerをプリインストールした筐体型端末「Hack0」を開発している。また、Nayutaも、BTCPayServerを用いてLightning Networkによる実店舗決済実証実験を行なった他、ノンカストディアルウォレット「Nayuta Wallet」がBTCPayServerに対応している。
Square Cryptoからは、Bitcoin CoreコントリビュータのMatt Corallo氏の参画が発表されたばかりだ。さらに今回、BTCPayServerに対する助成金提供を発表したことによって、ますますSquareはクリプト分野におけるオープンソース開発コミュニティとの距離を縮めたといえる。クリプト分野のマスアダプション(普及)にむけたキープレイヤーとして、Square Cryptoによる今後の展開に注目していきたい。
●ConsenSys、アセットや金融商品のデジタル化はかる商用アプリケーション「CodeFi」をローンチ
このほど9/15にTelAvivで行われたEthrealにおいて、ConsenSysがアセット・金融商品をデジタル化できる「CodeFi」を発表した。これを用いると、ペイメント・エクイティ・不動産などアセットを低コストでデジタル化した金融商品の開発がスケール可能になる。複雑な技術を気にすることなしに、ブロックチェーンを用いて、アセット生成やドキュメント認証やプロセス改善が可能な点が特徴。
Assets・Payments・Networks・Dataの4つのコンポーネントで構成されている。
(1) Assetsは、ブロックチェーン上でデジタルアセットの発行・管理(ポートフォリオ管理・ライフサイクル管理など)を行う。
(2) Paymentsは、コードを使わずにペイメントロジックをカスタマイズし、APIなどを用いて既存ECシステムと連携できるほか、インボイスに基づく着金一覧をダッシュボード上で管理可能とする。
(3) Networksは、誰もが分散ネットワークへ参加しトークンを利用可能とするツール。
(4) Dataは、信用リスク・サイバーリスク・市場リスクなどの観点からデータ分析・リスク管理を行うエンジン。具体的な適用例としては、フランスの資産運用会社Meta Capitalと協業し不動産証券トークン化を行なっているとのこと。これは、ブロックチェーンを用いて、不動産投資商品むけの証券登録プロセス最適化に取り組むものだ。デジタル証券発行・ファンド管理のコスト低減・スピード向上するほか、ネットワーク参加者間の情報非対称性を低減を可能とする。
また、DeFiプロトコルむけスコアリング指標「DeFi Score」も発表された(GitHubはこちら)。これは、レンディングプラットフォームにおけるリスク評価メソドロジーで、大別して「スマートコントラクトリスク」と「金融リスク(流動性・担保)」の2点で評価するもの。スマートコントラクトについては、「どれだけの比率のコードが評判ある企業からの監査を受けているか」「形式的検証を行っているか」「コードはオープンソースか」「バグバウンティを提供しているか」などで評価する。今後、ガバナンスリスクやオラクルリスクの考慮や、レンディング以外のプロダクトへの適用、スコアリングアルゴリズムのDAO化などを計画している模様。
この「CodeFi」は、エンタープライズ企業むけに金融プラットフォームとして捉えることができる。企業が簡単にBCでアセット発行・セツルメント可能とする「OS」として、ブロックチェーンを正しく活用する助けになるのではないか。今後、効率の良いプロセスや従来不可能だった新しい金融商品開発に取り組む例が出てくることが期待される。
●Loopring Protocol上に作られた初めてのDEX「Dolomite」がローンチ予定
2019年9月20日、分散型の仮想通貨取引所「Dolomite」がローンチ予定であることが発表された。本DEXは、Loopring Protocol上に作られる初のDEXとなる。
Loopringは、香港に拠点を置くDEXプロトコルの開発企業。複数者間で、リング上にオーダーマッチングを図る技術である「Ring-Matching」の機能を中心として、トランザクションのスケーラビリティとセキュリティ面でのアップデートを重ね続けており、現在最新バージョンとして「Loopring 3.0」が公開されている。
Dolomiteは、Wyreと連携しているため、銀行口座にある法定通貨(USD)と、DEXのウォレット内の暗号通貨(ETH、wETH、DAI)を、0.75%の手数料で交換できる機能を備えている。Wyreは、決済系APIを提供する、米国のFinTech企業で、AirSwapとの連携も行なっている。Dolomiteは、米国内に法人を置いているため、アメリカ居住者でも利用することができる点も特徴的。
また、Vitalik氏によって提案された、EIP-1014のOPCODE「Create-2」を活用し、独自のアカウントモデルを構築したとのこと。これにより、ユーザーはメールアドレスとパスワード(および2段階認証)だけでウォレットを管理できる他、ETHをウォレット内に入れずとも、ERC20系トークンの取引をできるなど、高いユーザー体験を実現している。加えて、DEXとしては初となるNegative maker feeを導入しており、Maker(新規の指値注文者)の取引が約定すると、取引の0.1%分が手数料として、Makerの手元に入ってくる仕様になっている。
法規制強化やプロトコルレベルでのアップデートなど、事業環境の変化が激しいDEXレイヤーであるが、今後も革新的なプロダクトが登場することに期待し、注目していきたい。
Section2: ListUp
(リンクはこちら)
1. Bitcoin(「Segwitトランザクション、Bitcoinトランザクションの50%超へ」など)
2. Ethereum(「ItanbulテストネットGorliアップデート、10/30ゴーライブへ」など)
3. Bitcoin/Ethereum以外(「Hedera Hashgraph、26個のDappと共にパブリックネットワークをローンチ」など)
4. 統計・リスト(「Chaincode LabsによるLightning Network Protocol カリキュラム」など)
5. 論考(「英Cambrige大のCentre for Alternative Financeが発表した「2nd Global Enterprise Blockchain Benchmarking Study」レポート」など)
6. 注目イベント(「ScalingBitcoin」など)
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