構成
はじめに: 今週の注目トピック
Section 1: Technology Topics
1–1 Bitcoin
1–2 Ethereum
1–3 Bitcoin/Ethereum以外
1–4 統計・リスト
Section2: Articles & Papers
2–1 論考
2–2 論文
Section3: Future Events
はじめに: 今週の注目トピック
一般の店舗でモバイルウォレットを用いて仮想通貨支払いを行ったとき、モバイルウォレットの残高だけでなく、それに紐づくハードウェアウォレットをふくめて、「店舗が購入者の残高を監視することができてしまう」といったプライバシー面の問題があります。
そのため、プライバシー向上を目的としてトランザクションのミキシングサービスなどが利用されていますが、マネーロンダリングが疑われる場合もあるため、個人の権利としての扱いを巡って整理が必要です。また、企業間のコラボレーションにブロックチェーンを用いる場合にも、完全かつ正直な情報共有が必要となりますが、競合をふくむエコシステム内で情報を明かすことに心理的障壁があるのも事実です。
そうした中、機微情報についても、実際の情報を明かすかわりに数学的証明を明かすことで検証することが可能になってきています。JP MorganがプライベートペイメントシステムAnonymous Zetherを発表したほか、EYもEthereum上のプライベートトランザクションプロトコルNightfallをリリースするなどしています。トランザクションのプライバシーをめぐる、個人の権利・企業間コラボレーション・そしてマネロン規制のあいだの整合について、引き続き注目したいと思います。
Section 1: Technology
1–1 Bitcoin
●流動性確保にむけてLightning Labsが提案するHyperloop
通常のLightning Loopサービスはチャネル閉鎖なくLightningチャネル補充が可能だがオンチェーン手数料が必要。Hyperloopでは、署名集約を用いてスワップを集約することで個々のトランザクションがオンチェーン手数料不要にする
●Nayuta、Lightning Network使った電子工作キットを発表
シンプルな自動販売機やコインロッカーダイヤルなど
●Lightning Networkのインフォグラフィックス(1,2,3,4,5)
●Bitcoin Nigili、クロスプラットフォームコマンドラインツール
●Lightning LabsのLNDに関するオーバービュー記事。ペイメントチャネルのアップデートからマルチホップペイメントなど
●ビットコインのコベナンツに向けたOP_CHECKOUTPUTSHASHVERIFY オペコードの解説記事
●Taproot/Schnorr解説記事
1–2 Ethereum
●JP Morgan、プライベートペイメントシステムとしてZetherプロトコルの匿名エクステンションAnonymous Zetherを発表(ホワイトペーパーはこちら)
JP Morganのブロックチェーンチームが、プライベートペイメントを可能にするZetherプロトコルの拡張を開発。Zetherは、Ethereumのようなアカウントベースのアセットむけプロトコルにおいて、ゼロ知識証明を用いて秘匿ペイメントを可能にするもので、Stanford大学とVISA Researchにより発表された。取引金額および送信者のアイデンティティといったトランザクション詳細を秘匿する。JP Morganはこの拡張をQuorumへ統合するものとみられる
Confidential Transactions同様にPedersenコミットメントを用いて、準同型暗号により暗号化したまま計算を可能に。値が暗号化される際、所定の範囲内(非負)にあることを確認することが必要であり、bulletproofsのような範囲証明が使われる。Zetherでは、bulletproofの範囲証明を改善し Σ-Bulletを提案
●EYによるEthereum上のプライベートトランザクションプロトコルNightfallがリリース(ホワイトペーパーはこちら)
スマートコントラクトとマイクロサービスおよびZoKrates zk-SNARKsツールキットを統合し、ERC20トークン(分割・交換可能なFungible Tokenむけ)およびERC721トークン(ユニークなアイテムを表現するNon-Fungible Tokenむけ)のプライベートトランザクションを可能にする。なお、現時点ではトークン移転証明の計算には10分程度要するとのこと
zk-SNARKsは、インプットの値を明かすことなしに、インプットの計算が正しく行われたことを証明することができるもの。宛先や金額を送金者・受金者の間で秘匿できるため、パブリックチェーン(誰が誰へいくら送金するかを明かすことが前提)におけるプライベートトランザクションに有用とされる。送金者(証明者)は秘密裏に自身のマシンで計算し、得られたパブリックアウトプットセットをブロックチェーン上で共有。このアウトプットは暗号化されており参加者が読み取ることができず、送金者・受金者のみが読み取ることができる。送金者(証明者)は、正しく計算されたことを示す証明のみをブロックチェーン上で共有し、この証明をもちいて所定の計算が正しく行われたことを検証。証明鍵・検証鍵および制約ファイルを用いてトークンを秘匿化した上で、ゼロ知識で証明できる
●Chainlink、分散オラクルをEthereum メインネットローンチ
スマートコントラクトはオフチェーンデータやAPIなど外部リソースにアクセスできないが、外部リソースとして、単一オラクルを使うだけでは単一障害点となり信頼性損ねる点が課題とされている。これに対して、Chainkinkは「オラクルにおける分散性」を提供することによって、エンドツーエンドの信頼性を維持するとしている
●ClearmaticsによるEthereumプライバシーのスライド
1–3 Bitcoin/Ethereum以外
●BUIDL、仮想通貨交換業者向けAML対策ツール“SHIEDL”を開発
各種機関から公表されている制裁対象国・組織等のアドレスに加え、機械学習を用いて各アドレスからのトランザクションの流れや、コインミキシングサービス等の利用状況などを分析し、各アドレスのリスクスコアを算出するツール
その他、継続的に関連アドレスを監視し、高リスクである事が判明した時には取引所に通知。主要通貨であるBTC・ETH・XRPから対応
●Zcash Foundation、シールドアドレスファーストのZcashウォレット「Zepio」を発表
●Telagram、Telegram Open Network (TON)のテストクライアントをリリース
●Salesforce、ブロックチェーンプラットフォーム発表
●Kaleidoのフルスタックエンタープライズブロックチェーンの概要
●ブロックチェーンコミュニティスペース「GBEC Park」が福岡に開設
1–4 統計・リスト
●Multicoin CapitalによるCrypto Archives。ゼロ知識、プライバシー、コンセンサス、スケーラビリティ、TEEなど
Section2: Articles & Papers
2–1 論考
●米NISTも協調してとりまとめが進められているZKProof Community Reference
●モバイルメッシュネットワークを用いたBitcoinトランザクションの分散化
●Ethereum1.0とEthereum2.0の経済的リンク
2–2 論文
●Multi-Party Virtual State Channels
●Blockquick super light client for IoT devices
●Bandwidth-Efficient Transaction Relay for Bitcoin
●Lattice RingCT v2.0 with Multiple Input and Output Wallets
●Ring Signature from Hash-Then-One-Way Signature
●ShareLock: Mixing for Cryptocurrencies from Multiparty ECDSA
●Atomic Multi-Channel Updates with Constant Collateral in Bitcoin-Compatible Payment-Channel Networks
●DLSAG: Non-Interactive Refund Transactions For Interoperable Payment Channels in Monero
●Atomic Cross-Chain Swaps with Improved Space and Time Complexity
●Read-Uncommitted Transactions for Smart Contract Performance
●A Reference Architecture for Blockchain-based Peer-to-Peer IoT Applications
●On fast probabilistic consensus in the Byzantine setting
●Direct Acyclic Graph based Blockchain for Internet of Things: Performance and Security Analysis
Section3: Future Events
●MIT VDF Day 2019(5/17 at Cambridge)動画はこちら
●Lightning network Hack Day Munich(6/1–6/2 at Munich)動画はこちら
●Breaking Bitcoin(6/8–6/9、at Amsterdam)
●Decrypto Tokyo 2019(6/8–6/9 at Tokyo)
●IEEE Security & Privacy on the Blockchain (6/17–6/19 at Stockholm)
●Zcon — Annual Privacy Conference(6/22–6/24 at Croatia)
●Crypto Valley Conference(6/24–6/26 at Zug, Switzerland)
●Devcon5(10/8–10/11 at Osaka)
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