今週の注目トピック
Takahiro Hatajima(@th_sat)より
Liquidのサイドチェーン上でTether(USDT)のローンチが発表されました。また同じくLiquid上でc-lightningを用いたLightningペイメントも発表されています。併せて、OpenLawが金融むけプラットフォームとしてOpenLaw Financeを発表した点は注目です。
Section1: PickUp
●Liquidサイドチェーン、Liquid Network上におけるUSDTローンチを発表
Liquid Sidechainは、世界各国の暗号通貨交換業者が参加している複数ノード運営によるBitcoinにペグするサイドチェーン。即時ファイナリティ(2分以内)や、秘匿トランザクション(金額を秘匿するConfidential Transactions、金額やアセット種類を秘匿するConfidential Assets)が基本的な特徴となっている。トークンの発行も可能であり、Liquid上のトークン間でアトミックスワップが可能。
このほど、Liquid Sidechainとして、USDTをサポートすること(L-USDT)を発表した。L-USDTのデポジットやトレードはBitfinex上で利用可能となり、他のLiquidメンバーもLiquid USDT取り扱い可能になる。L-BTCとL-USDT間のアトミックスワップが可能であり、取引所を通さないOTC取引(OTCアトミックスワップ)ができる。Bitcoinという暗号通貨と、USDTというStablecoinの相互流通がが技術的に可能になったといえる。
直近、Liquidは、証券トークンプラットフォームLiquid Securitiesや、アトミックスワップツールLiquid Swap Toolも発表している。Liquid Securitiesを用いて証券トークンの取引を行う際に、USDTを提供して配当支払いなどが可能。また、Liquid Swap Toolを用いて、L-BTCとL-USDTのスワップをサードパーティなしに可能。
Liquid上ではConfidential Transactionsを用いた秘匿送金が可能であるため、L-UDSTの秘匿送金が進展すると、@whale_alertで動向トレースが難しくなり、流動性が増す可能性もあるとされる。
LiquidはBitcoinベースであり、他のプラットフォームと比較して安定性があるという見方もできる。拡張性より安全性が求められるアセットの取引においては、Liquidが選択される可能性もある。
一方、LiquidはFederated sidechainの方式をとっており、暗号通貨交換業者の連合体が主体となる。そのため、トランザクションの検閲や意図的なトークン利用制限などがされてしまう可能性もある。こうした両面を評価しながら、アセット流通のプラットフォーム選択がなされていくのではないか。
●Blockstream、c-lightningによるLiquidサイドチェーンサポートを発表
Liquidサイドチェーンでは、上記トピックでも触れたとおり、秘匿トランザクション、アセット発行などの機能を提供している。
このほど、Blockstreamより、c-lightningを用いたLiquid サイドチェーンサポートが発表された。これによって、ユーザーはLightningNetworkを用いてL-BTCアセットの即時マイクロペイメントが可能となる。L-BTCに加えて、他のLiquidアセットも今後サポートする予定。
BitcoinとLiquidは同じUTXOモデルであり、相違点は複数アセットをサポートするためのトランザクションやブロックフォーマットの違いなどであったことから、c-lightningをLiquid サイドチェーンにポーティングすることは比較的シンプルなものであったという。
Liquid上でLightningがサポートされることによって、店頭POS決済やM2Mマイクロペイメントの他、ポイント・Stablecoin・証券トークンなどのアセットを用いてオンラインコンテンツへの支払いを行うことも可能となる可能性がある。
今後、Bitcoin以外のアセットについてもLiquidアセットとしてサポートされることになれば(例:USDT)、諸々のアセットがLiquidアセットとしてLightningを用いたトランザクションができるようになるといったことも考えられることから、今後の拡張に期待していきたい。
●OpenLaw、証券トークン・債券・デリバティブなどの生成・発行をサポートするOpenLaw Finance を発表
契約自動執行に関連するプレイヤーとして、OpenLaw/Clause/Accordが代表的。このうちOpenLawは、契約書をマークアップ言語で記述できるツールを発表しているほか、各種機関と共同で具体的なプロジェクトを推進してきている。たとえば、米法律事務所Latham & Watkinsと共同によるAuto Convertible Noteの取組、カナダの法律事務所との共同による「擬似Stablecoinを用いたM&Aエスクローや補償請求に関する合意事項の自動執行」、米国のLegalTech企業Rocket Lawyerと協業で、まずペイメントまで行うRocket Wallet提供など。また、オラクルプラットフォームRhombusとの共同でデリバティブ契約執行に取組み、コールオプション契約から現物のデリバリまでをスマートコントラクトで執行。
このほど、これまでOpenLawが取り組んできた、シンジケートローン(LSTAとの協業)やM&Aエスクロー(カナダ法律事務所との協業)などの取組をベースにして、証券トークン・債券・デリバティブなどの生成・発行をサポートするOpenLaw Financeが発表された。
OpenLaw Financeは、カスタマイズを通じて、各種デジタルアセットの管理・生成トランザクションが可能。さらに交換業者のシステムやアイデンティティサービス、ウォレット、オラクルと接続して様々な金融サービス構築が可能になるとしている。
自動執行に際して、0xのDEXやDaiのStablecoinなどを組み込んでいる点が特徴的。0xのDEXと接続によるリスティングやホワイトリストベースの基本的なKYC/AMLも提供しており、例えば、「Vesting scheduleに沿って株式トークンの発行を自動的にスマートコントラクトベースのエスクロー口座に対して行い、事前に定めたスケジュールに沿ってエスクローから受給者へ移動する」などが可能になるとのこと。具体的イメージとしてこちらのリンクからは、OpenLaw上でDaiインボイスの処理を行う様子が確認できる。
また、金融取引において重要となる匿名性についても手当がなされており、今後、EYのNightFallと組み合わせてゼロ知識証明を用いたプライベートトランザクションを可能としたり、BitGoなどカストディソリューションとの統合も予定し、オープンで透明な金融システムを目指していくとのこと。
こうしたOpenLawの動きは、進展する金融機能のアンバンドリングの一環として受け止めることができる。なお、関連する動きとして、Clauseからも、各マイルストーン完了をトリガーにしてペイメントを行う「Milestone Payment Smart Contract」のテンプレートが発表されている。デジタル化を通じて金融アセットの発行・流通や、契約執行のアンバンドリングが進むことによって、金融サービスへのアクセスが益々滑らかなものになることに期待したい。
Section2: ListUp
(リンクはこちら)
1. Bitcoin(「MIT、Ellipticと協働でBitcoinトランザクションのデータセットを分析」など)
2. Ethereum(「Microsoft、機械学習モデルむけにEthereumブロックチェーン利用」など)
3. Bitcoin/Ethereum以外(「Litecoin、半減期を迎える」など)
4. 統計・リスト(「Bitcoin/Ethereumのリサーチリソースリスト」など)
5. 論考(「CoinGecko2019年Q2レポート(日本語版)」など)
6. 注目イベント
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