LayerX Newsletter for Tech (2019/08/26–09/01)

Issue #22

今週の注目トピック

Takahiro Hatajima(@th_sat)より

HyperledgerプロジェクトにPegaSysチームが新たにHyperledger BESUとして新規プロジェクトを提示しています。Programmable Moneyに関連するOpenLawの取組のほか、Libra向けにクリプトゾンビが提供されるという話題を紹介します。また、Lightning Networkで発表された脆弱性トピックについても紹介します

Section1: PickUp

EthereumクライアントPantheonがHyperledger BESUとしてHyperledgerプロジェクト入り

  • ConsenSysのエンジニアリングチームPegaSysは、JavaベースのEthereumクライアント「Pantheon」の開発を進めてきた。この「Pantheon」はプライバシーやパーミッションなどの機能を備え、エンタープライズむけアプリケーション開発に利用されることを意図している。

  • このほど、HyperledgerむけEthereum クライアントとして、テクニカルステアリングコミッティ(TSC)により承認された。名称をPantheonからHyperledger Besuと改称し、Hyperledgerプロジェクトにとって初めてのパブリックチェーン互換ブロックチェーンプロジェクトとして位置付けられている。特徴としてはプライバシーやパーミッションの要件をみたし、エンタープライズ企業とパブリックチェーン結ぶゲートウェイとなることをゴールとしている。Hyperledger Besuはビジネス用途で使われることの多いJavaで書かれており、アプリケーション開発者にも都合が良いとされる。ロードマップとして当面はIncubationステータスとして、Hyperledgerプロジェクト内で成熟度を高めていくことが期待されている(ライフサイクルとしてはIncubation→Active。Activeになっているプロジェクトとしては、FabricやSawtooth、Indyなどがある)。

  • Ethereumクライアントには、「トランザクション処理実行環境」「トランザクション実行関連データ保持むけストレージ」「他ノードとステート同期するためのP2Pネットワーキング」のほか「アプリケーション開発者むけAPI」が含まれる。

  • Hyperledger Besuは、EEAの仕様を実装した上で、コンセンサス方式としてはPoA(IBFT 2.0、Clique)、PoWを利用。P2Pネットワークとしては、ネットワーク上でピアを探すUDPベースプロトコル「Discovery」、ピア間のコミュニケーションむけTCPベースプロトコル「RLPx」を提供。プライバシー機能としては、トランザクション当事者間にプライベートを保ち、他者からはトランザクション内容・送信者・参加者リストにアクセス出来ず、Aztecプロトコル含むゼロ知識証明を用いたプライベートトランザクションを利用可能するとされる。

Source: https://www.hyperledger.org/blog/2019/08/29/announcing-hyperledger-besu

  • Hyperledgerとしてはじめてのパブリックチェーン互換ブロックチェーンプロジェクトであることから、Hyperledger BesuはConsenSysを後立てに持ち、エンタープライズ企業とパブリックチェーンを結ぶパスとして、Quorumの競合になりえることが想定される。これまでConsenSysの、エンタープライズ企業むけプロジェクトでは、トレードファイナンスプロジェクトKomgoなどのようにQuorumが用いられることが多かった。そうした中、最近は中小企業むけポストトレードプロジェクトLiquidshare(Societe Generale, BNP Paribas, Euronext, Euroclearなど参加)においてPegaSysを利用するシーンも見られてきている。今後、エンタープライズ分野におけるブロックチェーン選定の選択肢へ成長する可能性があり、引き続き注視したい。

ConsenSysとOpenLaw、スマートコントラクト用いたStablecoinをRocket Lawyerと2020年ローンチへ

  • 今春、OpenLawは、デジタルリーガルプラットフォームを提供するRocket Lawyerとの間で、ブロックチェーンを用いた法的契約の自動執行に関して協業する旨を発表した。まずペイメントまで行うRocket Wallet提供などを通じて、スマートコントラクトベースに参加者間の複雑な法的契約をStablecoin決済として自動執行することによって、一般消費者がそれと知らずに暗号通貨を利用できるようにするとしていた(5/14づけLayerX ニュースレター)。

  • このほど、Rocket Lawyerが自身のStablecoin(スマートコントラクトを活用したトークン)を2020年初にローンチする旨を発表した。プライベートベータフェーズが昨年9月に始まっており、間も無くファイナルステージへ進むとのこと。法定通貨と交換可能なデジタル通貨を用いて、仲介人の不要なエスクローなどの条件付ペイメントを実現する。トレードは不可で、KYC/AML機能を実装する。

  • 従来の法定通貨を用いた取引と比較したメリットは以下の3点。「資金移動に第三者を必要とせず、複雑なエスクローサービスを生成する必要ないので、安価」「完全にデジタルプロセスなので、早い」および「トランザクションは改ざん困難な形でブロックチェーン上に記録されるので、安全」。長期的には紛争解決システムも開発していく予定であり、仲裁を通じて、契約上の紛争を解決するために法廷へ出向くことが不要になるとのこと。

  • OpenLawの関わるプロジェクトでは、この他に、CompoundのcDAIを用いて、リアルタイムペイメントと自動貯蓄を実装するものが発表されている。DAIをCompoundに預けることによって受け取るcDAIを使って、自動で利子を稼ぎながら決済に使えるデジタルマネー貯蓄口座を作るというもの。

  • また、スマートコントラクトを組み込んだウォレット(コントラクトウォレット)でもユニークな動きが見られる。例えば、YAWというウォレットは、DAIを元手に貸し出したcDAIにより生み出した金利をもって、トランザクション手数料(ガス代)に充当することで手数料フリーを実現する。

  • ドルや日本円のような法定通貨そのものをプログラムすることはできないが、ブロックチェーン上の暗号通貨技術を使えば、通貨をソフトウエアとして実装することが可能となる。こうした「プログラマブルなマネー」が作りだす新たな顧客体験において、引き続き「未来のおカネの姿」を見出していきたい。

Loom Network、Move言語を用いてLibraブロックチェーン開発の基本をマスターするクリプトゾンビをまもなく提供開始

  • Libraは、ブロックチェーンのパブリックローンチを2020半ばに予定しており、テストネットローンチ当初からこれまでに公開されたMove言語を一部の開発者たちが、テストネットやMove言語を用いてウォレットやエキスプローラやツールを開発するなどしている。

  • 一方、Loom Networkは、クリプトゾンビの開発・提供を通じて、ゲーム開発を通じてインタラクティブに学習する形で、これまでに40万人以上のEthereum Dapps開発者の育成に貢献してきた実績がある。まもなく提供開始とされる新たなクリプトゾンビでは、シンプルなゲーム開発を通じて、LibraブロックチェーンやMove言語の基本を学習できるもの。(Early Accessむけ登録サイトはこちら

  • LibraをEthereumと比較すると、同じくアカウントモデル・チューリング完全・ガスモデルをとっている一方で、相違点としては、楕円曲線はsecp256k1ではなくEd25519、コンセンサスがLibraBFTであるほか、コントラクトはModuleと呼ばれ、Moduleに定義されたResourceがステートデータの役目を果たすなどデータの持ち方も特徴的なものとなっている。

  • トランザクション構造としては、データだけでなくScriptという形でMoveプログラムを埋めこむことができるため、トランザクションの表現を柔軟に可能。さらに、アカウント構造としては、1つのアカウントに複数のModuleをぶらさげることができる。

  • このように、LibraのMove言語では、デジタル資産を定義でき、プログラマブルに扱うことができる。通貨自体がプログラマブルになり、柔軟にプログラマブルな形で金融サービスをデザインすることが可能になる。プログラマブルなデジタルアセットとしてのLibraの姿に引き続き注目していきたい。

Lightning Networkに、資産の安全性に関わる脆弱性が発見される

  • 2019年8月30日、Lightning Network(LN)の中心的な開発者であるRusty Russell氏が、現在、複数のLN関連プロジェクトにて、資産の安全性に関わる脆弱性が発見されていることについて、LN開発者向けのメーリングリストにて呼びかけた。

  • なお、同氏は4週間後の9月27日に、全詳細について発表を行うとし、安全のため、それまでにc-lightning、lnd、eclairのクライアント側のアップデートを行うように呼びかけている。

  • 上記の脆弱性問題に加えて、2019年に入り、LNのネットワークの規模が、直近数ヶ月で縮小傾向にあることについての分析した記事が、CCNより公開された。同記事によると、過去5ヶ月でLNのペイメントチャネルのうち、23%がクローズされた他、ネットワーク全体にロックされているBTCの量も、同期間にて、22%低下している。

新規に作成されたチャネル(青)と既存のチャネル(オレンジ)の数が、両方とも減少傾向にある。Source:bitcoinvisuals.com

  • また、LNノードの運用インセンティブに関しても、問題点が指摘され始めている。現在、PoSコインのマスターノードを運営すると5~7%ほどの年利収入が見込めるのに対し、LNノードでは「一日わずか4000~10000 satoshi (40円~100円ほど)、月間平均で$20ほどの収益にしかない」というノード運営者の声も紹介されている。革新的な技術だけに、今後のインセンティブ設計の改善なども含め、引き続き動向に注目していきたい。

Section2: ListUp

(リンクはこちら

1. Bitcoin(「フルノードのストレージ負担を削減しつつIBDの支援を可能にするSecure Fountain Architecture(SeF)」など)

2. Ethereum(「Ethereum Foundation、Ethetreum2.0 Ph0にむけて助成金対象発表」など)

3. Bitcoin/Ethereum以外(「Hedera Hashgraph、9/16にメインネットへ。ボーイング社などがノード運営に参加」など)

4. 統計・リスト(「Identity Management with Blockchain: The Definitive Guide (2019 Update)」など)

5. 論考(「A Framework for Blockchain Governance Design: The Prysm Group Wheel」など)

6. 注目イベント

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