今週の注目トピック
Tomoaki Kitaoka(@tapioca_pudd)より
今週はまず、AWS Nitro Enclavesのリリースをピックアップします。AWS Nitro Enclavesは高度な機密情報保護のためのコンピューティング環境であり、Intel SGXやAMD SEVのようなTEEをそのまま用いることとは異なるアプローチで、AWS上で隔離実行環境を提供します。次に、Ethereum 2.0 Phase 0メインネットの仕様のリリースをピックアップします。Ethereum 2.0 Phase 0の最短ローンチ日は12月1日に決定し、いよいよリリースが近づいてまいりました。最後に、1inchのV2アップデートをピックアップします。今回のアップデートにより、新しい探索アルゴリズムやルーティングアルゴリズムのAPIが公開されます。
リスト編と合わせてご覧ください。
Section1: PickUp
● 高度な機密情報保護のためのコンピューティング環境 AWS Nitro Enclavesがリリース
Nitro Systemにおいて追加の隔離保護を提供するAWS Nitro EnclavesがGAされた。金融サービスなどで高度なセキュア情報を扱うことを想定し隔離された実行環境「Nitro Enclave」が1つのEC2インスタンスに対して1つ生成される。
それぞれのEnclaveには、EC2のメモリやCPUリソースを割り当てることができ、独立したカーネルOS上で動作する。Enclaveは、外部のネットワークやストレージに接続することはできず、admin IAM権限でもユーザーアクセスはできない。全てのデータは親EC2とのvsockのみでやりとり可能となる。
Nitro HypervisorがそれぞれのEnclaveに対するattestation documentを生成し、署名する。このdocumentにはアプリケーションプログラムのハッシュ値など3種類のPlatform Configuration Registers(PCRs)を含むので、Enclaveで意図したプログラムが実行されていることを検証することが可能だ。
Intel SGXやAMD SEVのようなTEEをそのまま用いることとは異なるアプローチでAWS上で隔離実行環境が提供されることになり、応用活用が期待される。(文責:Osuke)
●Ethereum 2.0 Phase 0メインネットの仕様がリリースされ、最短ローンチ日が12月1日に決定
Ethereum 2.0 (Eth2)のPhase 0メインネットの正式な仕様がリリースされた。また同時に、Eth2でステーキングを行うためのデポジットコントラクトがデプロイされ、ジェネシス(いわゆるローンチ)が最短で日本時間の12月1日の21時に実行されることとなった。
Eth2は、Ethereumのスケーラビリティとセキュリティ向上を狙うアップグレードプロジェクトである。Phase 0では、Proof of Stake (PoS)のチェーンであるBeacon chainがステーキングとバリデータの管理を行う。Phase 0の時点では送受金やスマートコントラクトには使えないが、それら機能が実現できるようになるPhase 1以降の礎となる。
ジェネシスが実行されるためには少なくとも16,384(=2^14)個のバリデータが参加しなければならない。1バリデータにつき32ETHのステークが必要であり、申請してから登録されるまで7日間を要する。そのため、12月1日にローンチされるには、その7日前までに16,384個のバリデータが登録されていなければならない。また、デポジットしたETHは、現在のEthereumメインチェーンがEth2のチェーンとマージされるまで返金できない(マージするフェーズはPhase 1.5と呼ばれ、Phase 1.5ローンチ時期は未定であるが1~2年後と予想されている)。
執筆時点で総デポジット額は約50,000ETHであり、これはジェネシスまでに必要な524,288(=16,384 * 32)ETHの約10分の1である。52万ETHの時点での年利の推定値は約22%である。総ステーク量が多ければ多くなるほど年利は下がり、例えば200万ETHなら約11%となる。デポジットの際には、コントラクトアドレスを充分にチェックしてからETHを送ることが推奨される。
Eth2のローンチは過去延期していたが、今回具体的なローンチ日時が決定したことで期待が集まる。(文責・岡南)
●1inchが新しいバージョン(V2)をリリース
DeFi取引所の1inchは11月6日、新しいバージョン(V2)をリリースしたと発表した。今回の最新アップデートには、UIの刷新、ガス料金の最適化などの改善が含まれており、1inchを通じてトークンスワップを実行する際にユーザーにとって最も最適なレートを確保することが可能になる。また今回のバージョンアップで、Uniswap、Balancer、Curve、Kyber、Mooniswap、Sushiswapなど主要なプロトコルをサポートするようになった。
V2の最大のアップデートはPathfinder APIの導入で、この新しいAPIには新しい探索アルゴリズムとルーティングアルゴリズムが含まれており、1inchユーザーがトークンスワップのための最良のパスを最短時間で見つける。また、Pathfinder APIはトークン・スワップが「市場の深さ」に基づいてベースとなる取引所間で分割されることを確実にする。単純なスワップだけでなく、PathFinder APIは、AaveやCompoundのようなレンディングプロトコルから担保トークンをパック、アンパック、移行する機能をユーザーに提供する。このような機能は、DeFiユーザーの時間とガス料金を大幅に節約することができるという。
(引用: https://miro.medium.com/max/700/0*BL52g8VnSWhHAKHD)
1inchは、プラットフォーム上での失敗した取引を減らすために力を入れていることがわかる。今回のアップデートでは、失敗した取引に対する答えであるPartial and dynamic fill mechanism(パーシャル・ダイナミック・フィル・メカニズム)を作った。このソリューションにより、失敗した取引でガスを無駄にする代わりに、ユーザーの交換されていないトークンをウォレットに戻すことができる。
チームは新しいユーザーインターフェースを完全にゼロから構築したため、1inchのUIも大幅に改善された。ユーザーからの提案を受けて、1inchチームはまた、トレーダーが取引全体のサイズを暗号通貨ではなく米ドルで見ることができるようにするための重要な機能を追加した。先を見越して考え、新しいUIをモジュール式に構築することで、1inch開発チームはユーザーが1inch取引所を使用する際に独自の取引ダッシュボードを構築することも可能にした。
1inch v2は、Certik、Hacken、Scott Bigelow、MixBytes、およびChainsultingの5つのセキュリティ監査にすでに合格している。 また、この業界で最も評判の良い企業からの監査も5件あり、現在も進行中である。おそらく監査よりもさらに重要なのは、1inch は実際にDeFi の基準でかなり実戦テストされており、この分野の他の多くのプロトコルよりも時の試練に耐えているとも言える。1inchの今後の動きに注目していきたい。(文責・金)
Section2: ListUp
1. Bitcoin
●Lightning Labs、Lightningノードオペレーターがチャネル流動性を売買できるノンカストディアルなマーケットプレイス「Lightning Pool」をローンチ
2. Ethereum
●Ethereum 2.0 フェーズ0、12/1ローンチに向けたプロセスが開始
●ConsenSysのプロダクトスイート。MetaMask、Codefi、Infura、Quorum、Diligence
3. Smart Contract・Oracle
●(特になし)
4. DeFi
●レイヤー2上でUniswapのように動くAirbiswap。Arbitrum Rollup上に構築
●マネックスクリプトバンク、「DeFi Ecosystem Report」を配信開始
5. Enterprise Blockchain Infrastructure
●(特になし)
6. Other Chain
●Moneroに導入された新しいリング署名スキームCLSAG
7. China Tech
●(特になし)
8. Digital Identity
●Trust over IP Foundationによる、オープンスタンダードなデジタルウォレット・デジタルクレデンシャルに基づくデジタルトラストの提案
●デジタル・アイデンティティの最新動向 (07-10-2020)
9. 統計・論考
●LayerX Trustブログ第二回 信頼の見取り図の集合ー「信頼を考える」を読んで
10. 注目イベント
●ACM CSS(11/9-11/13)
●Baseline Protocol Summit(11/12-11/14)
●Hong Kong Blockchain Week(11/17-11/19)
●Talk Show - EthBerlin 2.5(11/19)
●BLOCKCHAIN FOR SUPPLY CHAIN MANAGEMENT VIRTUAL CONFERENCE(11/19)
●Financial Cryptography and Data Security 2021(3/1-3/5)
●CoDecFin 2021: The 2nd Workshop on Coordination of Decentralized Finance(3/5)
●Asia Crypto Week(3/22-3/28)
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