今週の注目トピック
Tomoaki Kitaoka(@tapioca_pudd)より
今週はまず先週に引き続いてRollupとEth 2.0のテストネットについてピックアップしました。Aztecはプライバシーとスケーラビリティをzk-SNARKで両立するプライバシー保護のzkRollupプロトコル「Aztec 2.0」を発表しました。Ethereum 2.0 Phase 0のローンチに向けた新たなテストネット「Zinken」は無事稼働を開始しました。最後に、より軽量でよりセキュアな実行環境を実現する、SungらによるUnikernel内でのIntel MPKを用いたメモリ空間分離に関するペーパーをピックアップしました。
リスト編と合わせてご覧ください。
Section1: PickUp
●プライバシー保護のzkRollupプロトコル「Aztec 2.0」が発表
プライバシーを保護したスケーリングソリューションであるzkRollupプロトコルAztec 2.0が発表された。既にRopstenテストネットで利用可能になっており、ドキュメントやブロックエクスプローラー、ターミナルでのデモが公開されている。
Aztecはプライバシーとスケーラビリティのために、zk-SNARKをそれぞれ異なった方法で利用する。
zk-SNARKによるトランザクションのエンコード
zk-SNARKを用いたRollupであるzkRollup
これにより、データの可用性を確保しながら最大300 TPSまでスケーリングできる。
現在Aztecでできることは、入金、匿名出金、プライベート送金、マルチデバイスによるリカバリー、エスケープハッチ(全Rollupプロバイダがダウンしても資産保護する機能)である。従来のAztec 1.0と比べてガス代が1/200になっている。
次のステップとして、DeFiへのスケーラブルなプライベートアクセスを11月にローンチすることを計画している。Aztecコントラクトが取引トランザクションを仲介することで、UniswapなどのDeFiのトランザクションを1/10の価格でかつ匿名で利用できるようになる。ほとんどのDeFiプロトコルは、Layer 2に移植する必要はなく、監査済みのLayer 1のコードがそのまま使えると謳われている。また、zk-SNARKトランザクションのプログラミングを助けるスクリプト言語Noirも開発が進められている。
今後はメインネットローンチに向けて開発を続け、バグバウンティも発表予定とのこと。先日、Vitalik Buterin氏がRollup-centric Ethereumを発表したり(Newsletter #78)、zkSyncがzkRollupによるCurveのデモを公開したりするなど、Rollup技術に注目が集まっている。(文責・岡南)
●Ethereum 2.0 Phase 0のローンチに向けた新たなテストネット「Zinken」が稼働開始
日本時間10月12日(夜)、Ethereum 2.0 Phase 0の新たなテストネットであるZinkenが稼働を開始した(Eth2.0 Phase 0のテストネットSpadinaでインシデント発生、新たなテストネットZinkenのローンチへ)。
Zinkenは、Ethereum 2.0のジェネシス(新しいチェーンの最初のブロックの作成)をテストするための最後のリハーサルであり、9月29日に稼働を開始したSpadinaテストネットに続くものである。
Spadinaテストネットは、リスクの高いデポジットとジェネシスに重点を置いたテストを行う計画だったが、テストネットへの参加率の低さとクライアントプログラムのバグなどによって中断されたため、ZinkenでSpadinaでできなかったテストを実施することにしたという。
Ethereum 2.0の開発者はZinkenテストネットのローンチが成功したと見ており、"クライアントチームは監査を終え、メインネットのローンチに向けて最終準備を進めている。2020年のローンチが間近に迫っているかもしれない "とライアン氏は述べている。
現在テストネットの稼働状態は順調で、Ethereumのコミュニティメンバーや開発者などがテストネットの監視を行っている。
Zinkenテストネット参加率は理想の90%を下回っていたが、参加率は稼働開始から75%を超えている。
また、同日にPrysmatic LabsはPrysm Eth2クライアントのウェブインターフェースを発表するなど、今後の動向に注目したい(文責・金)
● SungらによるUnikernel内でのIntel MPKを用いたメモリ空間分離に関するペーパー
VMによるコンピューティングリソースの分離からより小さな実行単位ごとのリソース分離のニーズが増えるにつれて、より軽量でよりセキュアな実行環境が必要になっている。このセキュアな実行環境を提供する一つの手段として、Unikernelがある。
Unikernelは、カーネルを用いずアプリケーションを実行するための最小限のAPIを備えるLibrary OS上で実行する。これにより、特権モードのスイッチングコストを抑えられることでオーバーヘッドが削減する。
(引用:ACM SIGOPSのYouTube動画”Intra-Unikernel Isolation with Intel Memory Protection Keys”)
しかし、このようなアーキテクチャの性質上、Unikernelインスタンス内でのメモリ空間に対する権限分離ができないことがセキュリティ上の課題としてあげられる。本論文では、Unikernelの軽量・ハイパフォーマンスなサンドボックス環境を維持したまま、Unikernel内でのメモリ空間分離を実現するためにx86アーキテクチャにおけるIntel Memory Protection Keys(MPK)を活用している。
Intel MPKはスレッド単位でページグループのパーミッションを強制するハードウェア機構である。ページテーブルのビットフラグで権限をコントロールする。
(引用:ACM SIGOPSのYouTube動画”Intra-Unikernel Isolation with Intel Memory Protection Keys”)
Intel MPKを適用するUnikernel部分はRustよるUnikernel実装であるRustyHermitを用いて実装されている。
ハードウェア機構によるリソースのIsolationはConfidential Computingの文脈と相まって注目のソリューションだ。(文責:Osuke)
Section2: ListUp
1. Bitcoin
●公開鍵暗号、デジタル署名からMuSig、Scriptless Scripts/Adaptor署名、Taprootまでの概説記事
●Bitcoinブロックチェーン上でドキュメントや署名の真正性証明
2. Ethereum
●SNARKs and STARKs. A Small Difference with Big Implications
3. Smart Contract・Oracle
4. DeFi
●Monerium、ユーロと英ポンドをUniswap上で仲介者無しにスマートコントラクトのみを用いて交換するデモを公開
5. Enterprise Blockchain Infrastructure
●(特になし)
6. Other Chain
●Gemini、Zcashの「Shielded ZEC」に対応へ
●Goldman Sachsの元テクノロジストがBlockOneにジョイン
●Google Cloud、http://Block.oneと提携しEOSのBlock Producerに
7. China Tech
●(特になし)
8. Digital Identity
●自己主権型アイデンティティ(Self-Sovereign Identity)の概要
9. 統計・論考
●a16zが立ち上げたクリプトスタートアップスクールのドキュメンタリー。7人の生徒の6週間の様子を追う
10. 注目イベント
●ETHOnline (10/2-10/30)
●USENIX PEPR(10/15-10/16)
●IEEE CLOUD(10/20-10/24)
●ACM Advances in Financial Technologies – AFT 2020(10/21-10/23 at New York)
●戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)による「IoT社会に対応したサイバー・フィジカル・セキュリティONLINEシンポジウム〜 Withコロナの世界を支えるセキュアなIoTサプライチェーン基盤」(11/6, オンライン開催)
●ACM CSS(11/9-11/13)
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