今週の注目トピック
Tomoaki Kitaokaより
今週は「マイナポイント」の還元をスタートさせたマイナンバーカードの電子証明書の概要、分散型カストディアンのRenVMによる安全なアプリケーション開発方法としてのProgressive Decentralizationに関する記事、ガバナンストークンを導入したDeFiプラットフォームとして今週注目を浴びたThe SushiSwap Projectをピックアップしました。リスト編と合わせてご覧ください。
Section1: PickUp
● マイナンバーカードに格納された電子証明書を活用した「マイナポイント」の還元がスタート
マイナポイントは、キャッシュレス決済手段とマイナンバーカードを紐付けることによりチャージ額または決済額の最大25%を還元するキャンペーンだ。対応する決済手段は、Suicaなどの交通系IC、Paypay・LINE Pay、クレジットカードなど多岐にわたる。
紐付けを行う際には、マイナンバーカードに内蔵されている電子証明書をスマホのNFCを介して読み取ることで「マイキーID」として発行し、紐付けを行う。マイナンバーカードには署名用電子証明書と利用者証明用電子証明書の2種類の電子証明書が内蔵しているが、マイキーIDの発行には当人認証のために用いられる利用者証明用電子証明書を利用する。
マイナンバーカードの非接触インターフェースは、官公庁系のカードで広く採用されているISO/IEC 14443 TypeBに準拠している。カード内部には、以下の4つのアプリケーションが初期搭載されている。
公的個人認証AP: 前述の2種類の電子証明書が搭載され、署名用には6~16桁の英数字、利用者用には4桁の数字のPIN入力が必要となる。
券面事項確認AP: 基本4情報・顔写真・個人番号の画像を格納しており、券面技変造の有無を確認できる。アクセスするためには券面記載情報の入力などが必要。
券面事項入力補助AP: 個人番号や基本4情報のテキストデータを保持し、4桁の暗証番号や鬼面記載情報の入力などによるアクセス制限。個人番号へのアクセスは法令で認められる場合のみ。
住基AP: 住民票コードを保持し、自治体の利用に制限される。4桁の暗証番号によるアクセス制限。
2020/09時点で、マイナンバーカードの所有率は約3割にとどまるが、マイナポイント等でよりメリットが高まるにつれて普及していくか注目だ。(文:須藤)
●分散型カストディアンRenVMのProgressive Decentralizationについて
RenVMは分散型カストディアンである。例えば、ユーザーからBTCを受け取り、1:1の比率でERC-20トークン『renBTC』を生成し、ユーザーに譲渡する。ユーザーは、このrenBTCを使えば、BTCをEthereum上に持ち込み、DeFiなど各種アプリケーションで実質的にBTCを利用できるようになる。Bitcoin以外に、Bitcoin CashやZcashがサポートされている。現在110億円を超える価値の資産がロックされている。類似サービスには、中央集権的に行うWBTCなどある。
RenVMは段階的に分散化している。一般的に、クリプトアプリケーションは、十分にセキュリティを確保できていない状態での分散化は危険である。本年1月のa16zの記事にあるように、クリプトアプリケーションは開発初期は中央集権的に進めて、セキュリティが担保されるにつれ必要に応じて分散化を進めるのが安全である。これは『Progressive Decentralization』と呼ばれる。
実際にプロジェクトを立ち上げて、直ちに分散化を進めた結果、セキュリティを損なってしまったプロジェクトはいくつもある。例えば、tBTCやYam Financeは、開発当初から可能な限り分散化を行っていたゆえに、インシデントが発生してしまったという。
RenVMは、Multi-party computation (MPC)を用いて分散性を実現している。現在はMPCのグループが1つ存在しており、Greycoreと呼ばれる。Greycoreには13個のノードがあり、ノードは地理的に分散され、AWSとDigital Oceanで異なるアカウントで運用されている。
ただし現在、GreycoreにはRenの開発チームだけが参加しているため、中央集権性がある。ゆえに、開発チームが、内部で結託して攻撃をする可能性はある。しかし、もしそんなことをすれば、チームは今まで培ってきた努力と信頼を失い、法的に罪に問われることになり、さらには、RenVM自体の将来的な成功と価値を全て捨てることになる。したがって、将来的には分散化するものの、初期段階はセキュリティを保つため、部分的に中央集権的に進めている。
クリプトアプリケーションの分散性は中央集権のリスクがなくなる点で重要視されるが、「分散していること」と「安全であること」はイコールではない。Progressive Decentralizationを実施しているRenVMが、どう完全に分散化していくのか?今後、注目が集まる。(文責・岡南)
●ガバナンストークンを導入したDeFiプラットフォームThe SushiSwap Projectについて
分散型金融の世界(DeFi)のプロジェクトは、最近話題の一つである。日々新しいプロジェクトが追加され、市場の関心が高まる中で発展しているDeFi分野のプロジェクトの一つであるUniswapは、1日の平均取引高が5億3,700万ドルを超えている。
SushiswapはUniswapと同じようなプールに流動性を提供した投資家に取引手数料の一部を報酬として与えるプラットフォームではあるが、SushiSwapとUniswapの違いは、ガバナンストークン「SUSHI」だ。Uniswapはまだガバナンストークンを持っておらず、集めた取引手数料を流動性提供者に提供している。一方、SushiSwapは、約2週間後にプロトコルのメインネットが稼働した際に、流動性提供者にSUSHIトークンを提供することになる。
具体的には、現在Uniswapでは、どのプールでも取引手数料の0.30%をリワードとして流動性提供者に分配している。一方、SushiSwapでは、0.25%を流動性提供者に提供し、残りの0.05%はSUSHIトークンに換金して報酬を得ることになる。つまり、最も多くの流動性を提供している流動性提供者は、最も多くのSUSHIトークンを手に入れることが可能で、それを取引したり、ガバナンスの投票に使用することが可能になる。現在利用可能なプールの初期セットは下記の通りである。
CeFi Stablecoins: USDT-ETH, USDC-ETH
DeFi Stablecoins: DAI-ETH, sUSD-ETH
Lending Protocols: COMP-ETH, LEND-ETH
Synthetic Assets: SNX-ETH, UMA-ETH
Oracles: LINK-ETH, BAND-ETH
Ponzinomics: AMPL-ETH, YFI-ETH
Delicacy (2x reward): SUSHI-ETH
現在、Sushiswapにロックされている暗号通貨の総額が2億5,000万ドルに達している。
一方、多くのDeFiの専門家は、Sushiswapは監査を受けるために動いているものの現在はまだ未監査であり、SUSHIはリスクの高い投資になると述べている。Dharma Labsの共同創業者Brendan Forster氏によると、Sushiswapへの投資は流動性提供者にとって絶対的な損失をもたらすと考えており、その恩恵を受けるのはSUSHIの創業者だけだと言及している。Sushiswapは、Chef Nomiというペンネームで知られる匿名の人物または開発チームによって設立され、この個人または開発チームは、発行されたSUSHIの10%を得ることになる。今後の動向に注目していきたい(文責・金)
Section2: ListUp
1. Bitcoin
●Nayuta、Google PlayでNayuta Coreの早期アクセス版を公開
2. Ethereum
●AZTEC のConfidential payments とQuorumのPoAを用いたBraveによるスマートコントラクトとサイドチェーンの分散化についての取り組み
3. Smart Contract・Oracle
●Chainlink、機微データの真正性を証明するオラクル向け検証プロトコルDECOをコーネル大学より買収と発表(コーネル大学IC3のプライバシー保護オラクルDECOのサイト)
Chainlinkが立ち上げたChainlink Labsには、コーネル大学のAri Juels氏などが就任している
●Chainlink、OasisLabsとのインテグレーションも発表
4. DeFi
●DeFi(分散型金融)とCompound=無人仮想通貨貸借プラットフォーム
●CircleがリリースしたUSDC 2.0ではガス手数料が不要に
5. Enterprise Blockchain Infrastructure
●ConsenSys、QuorumをJP Morganから買収発表
6. Other Chain
●(特になし)
7. China Tech
●北京のスマートシティガバナンス基盤にHuaweiクラウドブロックチェーン。北京市政府とブロックチェーンベースのデータ共有プラットフォームを共同開発
●AntGroupが上海証取に提出した目論見書において、「ブロックチェーン」に130回にわたり言及
8. Digital Identity
●「個人所有アイデンティティ(Bring Your Own Identity)の業務利用」が、過度な期待のピーク期を過ぎて幻滅期に移行
●OpenID Foundation Japan - YouTube
9. 統計・論考
●(特になし)
10. 注目イベント
●BG2C FIN/SUM BB(8/24-8/25, at Tokyo)(動画リスト)
●Smart Contract Virtual Summit #0(8/28-8/29、オンライン開催)
●VLDB 2020 (8/31-9/4, オンライン開催)
●Internet Identity Workshop XXXI (#31)(10/20-10/22、オンライン開催)
●ACM Advances in Financial Technologies – AFT 2020(10/21-10/23 at New York)
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