今週の注目トピック
Tomoaki Kitaokaより
今週は日本銀行金融研究所から公開されたキャッシュレス決済アプリのリスクマネジメントに関するディスカッションペーパー、無担保ローンやプライベートマーケットなどサポートを発表したDeFiプロトコルのAaveのv2へのアップデート、インドの仮想通貨取引所WazirXによる新たなDeFiプロトコルのローンチをピックアップしました。リスト編と合わせてご覧ください。
Section1: PickUp
●日本銀行金融研究所よりキャッシュレス決済アプリのリスクマネジメントに関するディスカッションペーパーが公開
スマートフォンなどを用いたキャッシュレス決済サービスにおける認証・認可やパーソナルデータの取り扱いなどの観点からのリスクマネジメントのあり方に関するディスカッションペーパーが日本銀行金融研究所より公開された。
パーソナルデータに関しては、認証の強化、データ利活用やAMLのためにより多くのパーソナルデータを保有しようとすると、求められるプライバシー保護・パーソナルデータの管理もより複雑になることが事業遂行上の重要な課題としてあげられている。
例えば、位置情報やアプリの情報、運動履歴などのログによって、端末所有者の日常生活の行動パターンを推測し、習慣化された行動パターンと異なる挙動を示している場合、正当な利用者ではないと疑うことが可能となるライフスタイル認証は厳格なプライバシー保護を必要とする。
また、QRコードを用いた決済方式では、盗難などによる利用者のなりすましのみならず、決済サービス業者側でのなりすましが容易になることが認証面でのリスクマネジメント例としてあげられる。具体的には、店舗などに表示されたQRコードを第三者が貼り替え不正送金させる事件が発生している。
このような事案に対するリスクマネジメントとして、プライバシー・バイ・デザインに沿ったシステムの構築やISO/IEC 29134準拠のPIA (Privacy Impact Assessment)によるリスク評価を行い、潜在的な損失額が経営体力に見合う状態となっていることを確認していくことが重要と考えられる。(文責:須藤)
●Aaveのv2が発表、無担保ローンやプライベートマーケットなどサポート
Aaveの新しいバージョンv2が発表された。従来のレンディング機能に加え、無担保でローンを借りれるクレジットデリゲーションや、機関投資家向けのプライベートマーケットなどの新機能がサポートされる。
まず、クレジットデリゲーションについて。ユーザーは、プールに預金すると利息と借入枠が得られる。しかし、利息が目的で借入枠を必要としない預金者もいる。v2では、トークン化された借入枠を、借入を必要とする信頼できる他者に委譲することで、さらに利益を得ることが可能になる。その際、OpenLawを用いて合意を行う。先日、分散型取引所のDeversiFiに対しクレジットデリゲーションを行う実験が行われた。
(引用: https://medium.com/aave/first-credit-delegation-on-aave-protocol-to-deversifi-is-here-c6c0aedb70d4)
次にプライベートマーケットについて。機関投資家向けに、様々な種類のトークン化された資産のためのプライベートマーケットが作れるようになる。近日中に、不動産トークン化のRealTとのコラボレーションについて発表予定とのこと。
金融アプリケーションのミドルウェアとして、クレジットデリゲーションなど分散型金融の可能性を押し広げる機能が出現しており、今後もこの分野に注目が集まる。(文責・岡南)
●インドの仮想通貨取引所WazirXが新たなDeFiプロトコルローンチを発表
インドを代表する仮想通貨取引所WazirX(ワジールX)は8月15日、ブロックチェーンアプリケーション開発プラットフォームであるMatic Networkと提携し、AMM(Automated Market Maker)プロトコルをローンチすると発表した。
AMMプロトコルは、従来の取引所で使用されている注文板を必要とせず、分散型エコシステムのアルゴリズムを使ってトークンが自動で取引されるような流動性プールを作ることが可能である。ユーザーは流動性プールに暗号資産を預け入ることによって動的プール料金、プライベートプール、カスタムプール比率、マルチトークンプールなどを実装したバランサーを利用しながらトークンの取引手数料を稼ぐことができるなどトークンの分散交換が可能となる。AMMプロトコルは、DeFiプラットフォームのUniswapやCurveなどにも採用されている。
Matic Networkは、サイドチェーンを利用してスケーラビリティ問題を解決するレイヤ2スケーリングソリューションであり、最大7200TPSという高いレベルのスケーリングとスループットを維持しながら、高いレベルのセキュリティと分散性を提供する。このような特徴が評価ポイントとなり、WazirXはMatic Networkを選んだという。
公式ブログによると、DeFiは世界的にペースを上げているが、まだ初期の段階であり、従来の金融をパーミッションレスでオープンなものに変える可能性を秘めていると述べている。さらに、DeFiはインドで始まったばかりの分野であり、インドをDeFi革命の最前線に連れて行くことを決意している。また、共同創業者兼COOであるSiddharth Menon氏は、新しいDeFiプロジェクトを通じて、WazirXは取引所の現在のユーザーと新たな機関投資家の資金を引き付けたいと述べている。
ユーザーが取引所トークンであるWRXトークンを使って流動性プールに参加することを期待し、機関投資家がDeFiの流動性を利用して取引を実行できるようになるとしている。
現在、9月にテストネット開始を目標に準備を進めている。今後の動向に注目していきたい。(文責・金[@jkcomment])
Section2: ListUp
1. Bitcoin
●ANYPREVOUTがソフトフォークでアクティベートされると使用可能になるRecovered-Key Covenants
●Liquid Network上のConfidential Assetベースのローンについてデモ動画(詳細説明)
2. Ethereum
●Ethereum 2.0フェーズ0スペックに関する形式検証の近況アップデート
●Iden3、2000TPSを実現するzk-rollupをローンチへ
3. Smart Contract・Oracle
●(特になし)
4. DeFi
●Tinlakeを通じたDeFiむけ新規アセットクラスとしてのトレードファイナンスについての解説
●Huobi、DeFiの研究・投資・インキュベーションにむけ「Huobi DeFi Labs」を開設
5. Enterprise Blockchain Infrastructure
●Quorumの資産を引き継ぐとされるConsenSysの資金調達をJPMorganがリードへ動いていると
●EU(European Commission)、European Blockchain Services Infrastructure (EBSI)について初のドキュメント発表
6. Other Chain
●ShardingベースのPoSブロックチェーンNEAR、CoinList上で調達へ
7. China Tech
●中国BNS、グローバルで開発者を呼び込むべく英語版ウェブサイトをローンチ
●Blockchain-based Service Network (BSN) ユーザーマニュアル
8. Digital Identity
●デジタル学生IDの実現にむけたセルフソブリン学生IDについて
●ToIP(Trust over IP)とSovrin Foundationの役割について
9. 統計・論考
●EU(European Commission)、European Blockchain Services Infrastructure (EBSI)について初のドキュメント発表
10. 注目イベント
●Ethereum Summer Camp 2020(7/9-8/30, オンライン開催)
●USENIX Security 2020 (8/12-8/14, オンライン開催)
●Crypto 2020 (8/17–8/21, オンライン開催)
●BG2C FIN/SUM BB(8/24-8/25, at Tokyo)
●Smart Contract Virtual Summit #0(8/28-8/29、オンライン開催)
●VLDB 2020 (8/31-9/4, オンライン開催)
●ACM Advances in Financial Technologies – AFT 2020(10/21-10/23 at New York)
Disclaimers
This newsletter is not financial advice. So do your own research and due diligence.