今週の注目トピック
Takahiro Hatajima(@th_sat)より
総務省で開催された「マイナンバーカードの機能のスマートフォン搭載等に関する検討会」の模様、楽天トラベル子会社の自己統治型アイデンティティソリューションについて紹介します。あわせて、1,000億円を投資する日本通運の医薬品物流戦略について紹介しています。
先日BCCCで登壇した模様をこちらから動画でご覧いただけます。(「ブロックチェーンはどのような価値をもたらすのか〜2020年上半期の国内外取組動向・技術トピック動向から振り返る〜」)
Section1: PickUp
●総務省「マイナンバーカードの機能のスマートフォン搭載等に関する検討会」(第1回)が開催
今回の新型コロナウイルスへの対応において国等のデジタル化について様々な課題が明らかとなったことも踏まえ、デジタル社会に不可欠なマイナンバーカードの利便性向上に向けて、マイナンバーカードの機能のスマートフォン搭載等について検討を行うため、「マイナンバーカードの機能のスマートフォン搭載等に関する検討会」が開催された。
この検討会では、「マイナンバーカードの機能(公的個人認証サービス)をスマートフォンへ搭載する方策」や「公的個人認証サービスと紐付けられた民間事業者が発行する電子証明書の利活用」について検討がされることになっている。これまでマイナンバーカードを使ってオンライン申請を行う際は、毎回カードをスマホにかざして読み取る必要があった。これを、スマホに電子証明書を搭載することによって、オンラインで本人確認可能とし、スマホ一つで手続きを実現可能とすることを目指す。
スマホへの搭載に際しては、Suicaなどで既存利用され、市販端末の多くに搭載が見込まれる「FeliCa-SEチップ」を利用することが想定されている。また、搭載する電子証明書の発行においても、秘密鍵・公開鍵・証明書を格納するアプレットとアプリケーションの安全な紐付けなど、安全性に関する検討課題をクリアする必要がある。
加えて、電子証明書を搭載するスマホには、機種変更や解約、故障・紛失、譲渡・転売といったライフサイクルに関する事象がつきものだ。そのため、これら事象に対応する業務フローの検討も必要となる。
なお、「公的個人認証サービスと紐付けられた民間事業者が発行する電子証明書」の例としては、xID社(クロスアイディ)が提供する公的個人認証サービスを活用したデジタルIDアプリがあり、加賀市をはじめとする一部自治体の行政手続きや民間の電子契約サービス等で利用可能となっている。xIDは、初回登録時のみスマホでマイナンバーカードの署名用電子証明書を読み取って本人確認を行い、新たな電子証明書を発行すれば、その後は読み取りの必要なしに、オンラインサービスへのログイン・電子署名が可能となるものだ。
検討スケジュールとしては、「令和4年度内にAndroid端末への搭載を目指す」とされ、約2年間で法整備のほか、実証実験やシステム構築が行われる予定だ。それにむけ、本年度内に「スマホ特有の課題に関する検討」「証明書の発行手順」「システム整備にむけた課題洗い出し」などが予定されており、今後の動向に注目したい。(文責・畑島)
●ShareRing、楽天トラベル子会社に自己統治型アイデンティティソリューションを提供
楽天トラベルが2020年5月に設立を発表したグローバルサービスであるRakuten Travel Xchangeとのインテグレーションを通じて、ShareRingが自己統治型アイデンティティソリューションを提供するとの報道がなされた。Rakuten Travel Xchangeの顧客が、パスポートや銀行カード、フライトや車両情報を安全に格納してユーザーによるアクセスを可能にするものであり、ホテル宿泊に際しても利用可能になる。集権型のアイデンティティ管理と異なり、自己統治型とすることによって、アプリケーションを通じて、アイデンティティの盗難や、詐欺・不正行為を低減するほか、チェックインに際して長蛇の列をなすことなしに、アイデンティティの即時検証が可能になるという。データはブロックチェーン上に安全に格納され、サードパーティからのアクセスができないため、個人データに関するリスクを排除され、旅行業界におけるカウンターパーティリスクも低減できるとされる。
出典:https://visionary-finance.com/sharering-integrates-with-rakuten-travel-xchange-to-improve-identity-security/
ShareRingは、ホワイトラベル型のソリューションであり、パスポートや銀行カードおよび旅程中の滞在先ホテルなどを格納する「ShareRing App」や分散型アイデンティティ管理に基づく自己統治型アイデンティティ「ShareRing ID」の他、Tendermintブロックチェーン上に構築されたブロックチェーンデータベース「ShareLedger」などのプロダクト群によって構成される。また、そのエコシステムとしては、カーシェア、ホテル予約、輸送機関、保険などを想定しているという。
こうした旅行関連のデジタルアイデンティティとしては、カナダ・オランダにおいて実証実験が行われた「Known Traveller Digital Identity」が有名だ。ブロックチェーン・生体認証・モバイル端末を用いて、パスポートのチップに格納されているアイデンティティをウォレット上に格納するものであり、世界経済フォーラムを通してホワイトペーパーも発表されている(2020/4/8発行のLayerX Newsletterで紹介)。
旅行サービスという、多種多様なユーザー体験の組み合わせで構成される一連のサービスにおいて、従来は個々に情報管理が分断されており、ユーザー体験を損なうものになっていた。様々なサービスがデジタル化される中にあって、今回の取組は、ユーザーにとっても、旅行業界におけるワンストッププラットフォームを生み出すものとして、他の業態への波及に期待したい。(文責・畑島)
●物流最前線、1,000億円を投資する日本通運の医薬品物流戦略
世界の医薬品市場は100兆円を超え、新型コロナウイルスの対策などで今後ますます成長していく市場である。日本通運は、5年前から1,000億円規模の投資を行い医薬品物流の事業に参入している。
本プロジェクトは、医薬品サプライネットワーク構想「Pharma2020」と呼ばれ特に日通の中で注力している産業の1つである。医薬品ロジスティクスは、高度な品質管理とサービスが要求され、投資と経験が重要な分野であるため、個社ごとの対応ではなく、産業全体を捉えることでプラットフォームのような仕組みを構築するという考えのもと推進している。
医薬品は安心・安全の担保が非常に重要である。そのための要素が、①医薬品の価値を保ち続けるための温度管理、②偽薬対策である。②に関して、国内で偽造医薬品のリスクは低いと考えられてきたが、2018年に卸売販売業者を通じて流通したC型肝炎偽薬の対応策として厚労省が出したガイドラインに沿った対策が必要になっている状態である。
上記対策として、2つのプラットフォームを構築している。1つがロジスティックスプラットフォームであり、1つが流通プラットフォームである。
流通プラットフォームという観点では、医薬品は流通過程で所有者が製薬メーカーや卸売事業者やドラッグストアや病院と変わっていくため、その流通過程のデータ履歴を改竄不可能な形で見える化することに非常に価値がある。その仕組み構築のためにブロックチェーンを活用し、コンソーシアムを組んでプラットフォームを運用していく考えだ。
またロジスティクスプラットフォームという観点では、従来の倉庫や車両の空間のみだった温度管理から、医薬品そのものの温度管理も合わせてしていく考えを持っており、現在開発フェーズに入っている。
出典:https://www.lnews.jp/2020/11/m100001saizen.html/2
まずは設計と新拠点4箇所の倉庫から開始し、中長期的にはグローバルなネットワーク構築も視野に入れながらプロジェクトが進んでいる。
これまで医薬品の保管期間や在庫管理はそれぞれが個別に行っていたため全国にある在庫量が明確になっていない状況が続いていた。本プロジェクトで医療産業全体を巻き込み、社会的意義の大きな仕組みが出来る可能性に非常にワクワクしている。引き続き注目していきたい。(文責・佐渡)
Section2: ListUp
1. 中銀デジタル通貨
●米FRBから中銀デジタル通貨CBDCについてのコラム記事が発表
●英国中銀BoE、将来的なデジタル通貨のもたらすインパクトから商銀のビジネスモデルを保護することは中銀の役目ではないとの見方示す
●各国中銀やアカデミアおよび国際機関による中銀デジタル通貨に関するリサーチレポートリスト
2. 暗号資産/デジタル通貨関連サービス
●PayPal、Bitcoinなど暗号通貨を米国の全アカウントホルダーが売買可能とのアップデート情報を発表
●Fidelity、Bitcoinを巡り頻出の批判にひとつひとつ解説するサイト開設
●Bitcoin 2020年トピックのふりかえり〈金融機関・機関投資家・アダプテーション〉
3. スマートな社会・産業
●シンガポールTemasek、分散台帳によるアイデンティティスタートアップを立ち上げ。W3CのDID標準に基づき、アイデンティティやVCの生成、選択的データ共有を提供し、VCは業界横断で利用可能
4. デジタル化へむけた政策議論
●経産省 | Society5.0時代のデジタル・ガバナンス検討会 デジタルガバナンス・コード
●総務省 | タイムスタンプ認定制度に関する検討会(第8回)
5. デジタル金融関連
●国際法律事務所のDLA Piperが、トークン化プラットフォームのローンチを発表。Hedera Hashgraphのブロックチェーン
●岩手銀行、電子契約実証実験にIBM Blockchain Platformを採用し、ブロックチェーン活用を拡充
6. 規制動向
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