今週の注目トピック
Satoshi Miyazaki(@satoshi_notnkmt)より
新年明けましておめでとうございます。本年も引き続き、LayerX Newsletterをよろしくお願い致します。年明けの第一号としまして、ConsenSysの提供するKaleidoプラットフォームにHyperledger Besuが加わったニュースと、スペインのCaixa BankがHyperledger Fabricベースの貿易金融プラットフォームであるwe.tradeに参画したニュース、ChainlinkがDEXプロトコルのLoopringとのインテグレーションを果たした件について、取り上げています。後ろに続きます、List編と合わせてご覧ください。
Section1: PickUp
●Kaleidoプラットフォーム、Hyperledger Besuのプロダクションサポートを発表
「Kaleido」は、AWSとConsenSysが立ち上げた、Ethereumを使ったエンタープライズ向けのブロックチェーンプラットフォームサービスである。この上でHyperledger Besuが利用可能になったことが発表された。本記事では、Hyperledger Besuの概要と、コンセンサスアルゴリズムやプライベートトランザクションおよびエンタープライズ向けクライアントといった特徴について紹介したい。
Hyperledger Besuは、Hyperledgerプロジェクトとして最初のEthereum実装であり、Enterprise Ethereumの要件を満たすもの。当初ConsenSysのPegaSysチームによって、コードネームPantheonとして立ち上げたもので、Besuの初期開発には50名の開発者が参画し、Hyperledgerプロジェクトにとって最初のパブリックチェーン互換として実装された。
コンセンサスアルゴリズムとしては、即時ファイナリティおよびパーミッションを備えたBFTコンセンサスアルゴリズム「Istanbul Byzantine Fault Tolerance (IBFT 2.0)」を採用している。IBFT 2.0ネットワークにおいては、トランザクションおよびブロックはバリデータと呼ばれる承認済アカウントによって検証される。既存バリデータは提案・投票を通じてバリデータの追加・削除を行う。即時ファイナリティを備え、フォークがなく、全ての有効ブロックはメインチェーンに含まれることが特徴。
プライベートトランザクション管理としては、ブロックチェーンネットワーク参加者のサブセットにのみ参照可能なプライベートトランザクションの実装として「PegaSys Orion」を備える。これは、トランザクションおよびコントラクトを、関係する当事者どうしのプライベートなものに保つもの。
また、Hyperledger Besu上に商用ライセンスのEthereumクライアント「PegaSys Plus」が構築されており、バリデータノードをリアルタイムで監視し、信頼性および一貫したアップタイムを確保するほか、SLAおよびベンダーサポート(9時間x週5日から24時間週7日まで)を提供する。このようにエンタープライズプロダクション版として、Hyperledger Besuのエンタープライズ向け適用を加速することが期待されている。
今回Hyperledger BesuがKaleido上で利用可能になることによって、開発者にとってプロトコル選択の幅が広がることに期待したい。
● スペインのCaixa Bank、貿易金融プラットフォーム「we.trade」に参画
2020年1月3日、スペインのCaixa Bankが、we.tradeに参画したことを発表した。同銀行は、スペインで3番目に大きなレンダーであり、127カ国に展開し、3870億ユーロもの資産を管理している。
we.tradeは、Deutsche Bank、HSBC、KBC、Natixis、Nordea、Rabobank、Santander、Societe Generale、UniCreditら9つの銀行によって立ち上げられた、ブロックチェーンを基盤技術においた貿易金融プラットフォームであり、中小企業向けの資金融資を円滑に行うことを目的としている。
本プラットフォームはIBMのHyperLedger Fabric上に構築されており、KYC機能や、貿易商品のトラッキング機能、資金の即時決済機能を搭載しており、短期的な資金需要が多く発生する貿易関連企業のニーズに応えるサービスとなっている。コンソーシアムメンバーである金融機関の承認を得ない限り、企業は利用できないため、we.trade上では、企業間で安全に取引を行うことが可能となっている。
中国の広東省では、ブロックチェーンベースの融資プラットフォームのローンチが発表されるなど、中小企業にとっての資金調達コストを下げる文脈でのブロックチェーン活用事例が相次いで登場している。今後も欧米や中国の動向について、合わせて注目していきたい。
●Chainlink、DEXプロトコルLoopringとのインテグレーションを発表し価格データフィードを提供へ
ChainlinkとLoopringが、LoopringのDEXプロトコルにおけるオラクルのインテグレーションを通じたコラボレーションを発表した。その第一弾が、DEXオーナーむけの価格フィードとしてEthereumメインネット上でゴーライブとなった。
Loopringは、ERC20トークン同士の交換が簡単に出来るサービスであり、zkRollupを用いてオフチェーンスケーリングを行うことが特徴。ゼロ知識証明を用いて全ての計算を検証可能なオフチェーンで行った上で、Ethereumチェーンには検証のために小さな証明データのみを提出する仕組みになっている。これにより、ブロックチェーンによるセキュリティ保証を保ちながら、スループットを高めることができる。
Chainlinkは冗長性あるオラクルネットワークとして、オンチェーンのスマートコントラクトに対してオフチェーンのデータフィードを提供。
スマートコントラクトを安全に保ちながら、Web APIやエンタプライズシステムやIoTデバイスや他チェーンなどといったデータプロバイダーとの間で信頼できるアクセスを提供できる(2019/7/2付ニュースレター参照)。Loopringとしては、例えばDEXオーナーが十分な量のステーキングをしているどうかの把握など、効果的に機能する上でオフチェーンインプットが必要であるとして、オラクルを重要視することになったとのこと。
ブロックチェーンに対してオフチェーンデータを提供するオラクルと
オフチェーン計算を通じてスケーラビリティを高めるセカンドレイヤースケーリングソリューションを利用するDEX。オンチェーンとオフチェーンの接点で稼働する2つのプレイヤーのコラボレーションとして注目したい。
Section2: ListUp
1. Bitcoin
●Bitfinexによる、Lightning Networkのインテグレーションの開発過程や学びについての共有記事
●「Mastering the Lightning Network」、O’ReillyからQ4'2020に出版予定
●Bitcoin Optech Newsletter#76の和訳リリース
2. Ethereum
●ディフィカルティボム遅延へMuir Glacierハードフォーク
3. Bitcoin/Ethereum以外
●Tapyrus、Tapyrus Core v0.3.0およびTestnet用のFaucetを公開
●Mimblewimbleチェーン上に任意のアセットの発行/送付、その秘匿化を行うConfidential Assetsを導入するペーパー
●OpenID Foundation、新たにeKYCおよびアイデンティティ保証のワーキンググループ設置
4. 統計・リスト
●Matter Labsによるゼロ知識証明関連のリーディングリスト
5. 論考
●ラストワンマイルの産みの苦しみに直面した2019年のブロックチェーン
●開発者からみた2019年のブロックチェーン業界ふりかえり記事。DeFi、zkSNARKs、オラクルなどのトピック
●L2技術が暗号資産取引サービスにも適用され始めた2019年
BitcoinではBitfinexがLightning入出金サポート開始、EthereumではzkRollupsやStarkDEXなど
IoTデバイスなどハードウェア(Helium, Orchid)、ストレージ(Filecoin, Areweave), DNS(Handshake, ENS)、dappプラットフォーム(Blockstack)、オラクル(Chainlink, MakerDAO, Compound, UMA)、ブラウザ(Brave)、SNS(Telegram、Facebook、Twitter)など
2020年は、コードからプロダクトそして一連の商用オペレーションに繋げる「engineering realization ability」が競争力になるとの見方を強調
Tencent、Ant Financial、WeBank、OneConnectなどそれぞれが金融やユーザーベースなどの強みを持つ
証券トークンにおけるセキュリティを参加者アイデンティティ、アクセス認可コントロール、プライバシー保護の三要素で俯瞰
DIDモデルのような分散管理や、TEE・MPCといったプライバシー技術、アクセスノードコントロールによる認証認可など
アイデンティティ管理システムとは?アイデンティティ管理におけるブロックチェーンやゼロ知識証明の有用性とは?分散IDsとは?自己統治型ID(SSI)とは?等
●NIST(米国標準技術研究所)によるブロックチェーンアイデンティティ管理システム理解の手引き
●ゼロ知識証明のユースケースまとめ。プライバシー、スケーリングの他、選択的開示やクロスチェーンでの証明への応用
6. 注目イベント
●Financial Cryptography 2020(2/10–2/14 at Kota Kinabalu, Sabah, Malaysia)
●Workshop on Coordination of Decentralized Finance(2/14 at Kota Kinabalu, Sabah, Malaysia)
●Stanford Blockchain Conference (2/19–2/21 at Stanford)
●EthCC(3/3–3/5 at Paris)
●Hyperledger グローバルフォーラム(3/3–3/6 at Phoenix, Arizona)
●MIT Bitcoin Expo 2020(3/7–3/8、Boston)
●Cryptoeconomic Systems Conference (CES ‘20)(3/7–3/8、Boston)
●EDCON(4/3–4/7 at Vienna, Austria)
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