LayerX Newsletter for Tech (2019/12/02–12/08)

Issue #35

今週の注目トピック

Satoshi Miyazaki(@satoshi_notnkmt)より

今週のニュースレターTech編では、Bitcoinの周辺領域における各種技術を俯瞰して紹介している他、Matterlabsによる「ZK-Sync」の公開、そしてBrave Browserの堅調なユーザー数拡大について取り上げています。下部に続くPick編と合わせて、ぜひご覧ください。

Section1: PickUp

Bitcoinの技術スタックにおけるイノベーション俯瞰

  • Bitcoinはその誕生から10年を経て、今なお様々なイノベーションが取り組まれている。ScalingBitcoin等で取り上げられている技術トピックも交え、Bitcoinを巡るイノベーションの方向性を俯瞰したい。大きく、スケーラビリティ、プライバシー、セキュリティ、そしてプログラマビリティという4つのカテゴリーで整理を試みる。

  • まずオフチェーンによるスケーラビリティ向上策の代表格Lightning Network(以下LN)だが、一旦充填したLNチャネルの充填量を柔軟に増減させるべく、AMP(Atomic Multi-Path Payment)、SplicingLightning Loopなどが提案されている。また、LNの支払い経路計算の負荷を軽減すべく、個別ノードからアウトソースできるようにするのが、トランポリンルーティング。この他、LNにおける流通対象として、コインだけでなく汎用的なデジタルアセットへと拡張したいという動きもあり、「Spectrum」は、Bitcoinにアンカリングする「RGBカラードコイン」を用いて、Bitcoinベースレイヤー上でトークン発行するものだ。

  • 一方、オンチェーンのスケーリングアプローチとして、主たるチェーンと別に副のチェーンを用いて逃がすのが、Sidechain。このうち、複数ノード運営によるBitcoinにペグする「Liquid Sidechain」が代表的。Liquid上の証券トークンプラットフォームとして「Liquid Securities」プラットフォームが発表されている。また「Erlay」は、トランザクションアナウンスの帯域幅を改善しネットワークのスピード向上はかるもの。さらに、チェーンの初期ダウンロードの効率化を図る動きもあり、「Utreexo」は、マークルツリーを利用してBitcoinのUTXOセットの圧縮をはかるハッシュベースのアキュムレータである。

  • 次にプライバシーについて、トランザクションの秘匿性を高めるのがConfidential Transactionだが、ゼロ知識証明として用いているRangeProofの証明サイズを小さくするのが「Bulletproof」。また、「Dandelion」は、ブロードキャストするノードのIPアドレスを隠すことによって、トランザクション伝播のプライバシーを高めるもの。スケーラビリティ文脈で取り上げられることの多いLightning Networkも、プライバシー面の評価が過小評価されがちだが、全ての状態変更をネットワーク全体でのバリデーションに依存しないため、プライベートなトランザクションが可能となる。

  • コントラクトの秘匿性については、マークルツリーでアプリケーションのロジックを表現することによって、利用条件を記述したトランザクションを通常トランザクションと判別困難にすることが出来る「MAST」や、複数の署名を一つに統合できる「Schnorr署名」を活用してMASTを実装する「Taproot」などが代表的。Schnorr署名の応用としては、この他にも、プライベートなスマートコントラクトをオペコードでなくデジタル署名として表現する「Scriptless Script」やオラクル提供者に対してコントラクトを秘匿することによって、提供する情報を意図的にコントロールされないようにする「DLC(Discreet Log Contracts)」などの取り組みが活発だ。

  • セキュリティについては、マイニングにおける更なる分散性確保が進められており、「BetterHash」プロトコルの提案に基づいて、マイニングプロトコル「Stratum V2」への移行が進んでいる。

  • プログラマビリティについては、Bitcoinの残高を消費する方法を制限する「Covenant」の実装が進められている。前述の「Taproot」登場を受けて、オペコードOP_CHECKTEMPLATEVERIFY(以前はOP_SECURETHEBAGと呼ばれていたもの)の実装が可能となっている。また、「秘密鍵の管理」はカストディアンにとっても重要な課題であることから、Bitcoin盗難発生時に資金回収を可能とする「Vault」の仕組みが提案されるなどしている。さらに、LNにおいても「デバイス紛失時にLN内の資産を復旧できない」というユーザビリティの課題を解決すべく、チャネルモニタリングに使われる「Watchtower」をウォレットむけデータバックアップサービスに応用する「Acaiプロトコル」が提案されている。この他に、スマートコントラクト向け新規言語として、Bitcoin Scriptを拡張する「Miniscript」「Simplicity」「BitML」などが登場している。

  • このように、Ethereumなどと比べて保守的な印象の強いBitcoinにおいても、多岐にわたるイノベーションが地道に進められており、今後の動向に引き続き注目したい。

Matter Labs、ZK Rollupベースのトラストレスなスケーリングソリューション「ZK Sync」発表

  • Ethereum FoundationのGrant獲得企業でもあるMatter Labsが、ZK Rollup技術を元にしたスケーリングソリューションを発表した。あわせてテストネットも公開しており、その概要を俯瞰する。その特徴は、Layer1の安全性を保ちながら高TPSおよび低遅延(即時ファイナリティ)を提供するところにある。

  • ZK Rollup(解説動画はこちら)はセカンドレイヤーのスケーリングソリューションであり、全ての資金はメインチェーン上のスマートコントラクト上に保持され、計算はオフチェーンで実行される。Rollupブロックに対して、状態遷移のゼロ知識証明(ブロック中の全トランザクションの有効性証明を含むSNARK)を生成した上で、メインチェーンのコントラクトによって検証されるという流れとなっている。

  • こうしたアーキテクチャとすることによって得られる効果として、Rollupバリデータは状態を破壊したり資金を盗難することができず、
    バリデータが協力をやめたとしてもユーザは常にRollupから資金をひきだすことができることに加えて、有効性証明があるためRollup監視を目的としてオンラインであり続ける必要がない。このように、L1(ファーストレイヤーにあたるEthereumチェーン)のセキュリティ保証を受け継ぎながら、高スケーラビリティを得ることができる。

  • また、ブロック証明がメインチェーンへ提示された後、Rollupスマートコントラクトによって検証されるとブロック中の全トランザクションはファイナライズされる訳だが、このL1のブロックレイテンシーが長いため、ZK Syncでは「即時トランザクザクションレシート」という工夫を織り込んでいる。コンセンサス参加者の2/3以上の署名により、次ブロックにトランザクションが取り込まれるとユーザにConfirmationを提供する。このように、ZK Syncでは、アセットをいつでもLayer1へ戻すことができるといったRollupの優位性を活かしつつも、ZK Syncのブロック内で即時トランザクションを用いることによって、ゼロ-confirmationでトランザクションを生成できるようにしている点が特徴的。

  • ZK Syncの提案にあわせて、ゼロ知識スマートコントラクトむけフレームワーク「Zinc」も発表されている。同様にプライバシー保護を特徴とするZEXEの場合、ゼロ知識回路について深い理解を必要とするなど、開発者への障壁が高いといった課題を踏まえ、Zincは、安全でシンプルで効率的なプログラミングフレームワークでありVMベースの実行環境を提案している。

  • このように、ZK Rollupをベースとして、トラストレスな形でスケーリングを提供するソリューションが示されたことは、セカンドレイヤーにおける技術開発として興味深く、今後の動向に期待したい。

Brave Browserの月間アクティブユーザー数が1000万人を突破

  • 2019年の11月13日に、「Brave 1.0」をリリースしたBrave Browserだが、ユーザー数が堅調に伸びていることが明らかになった。2019年12月 5日の発表によると、この度、月間のアクティブユーザー数(MAU)が1040万人を超えたことが明らかになった。Brave 1.0が公開されてから、わずか1ヶ月足らずで、約19%もの成長を誇っている。

  • 約1年前の2019年1月には、MAUが約550万人ほどであったことから、この1年でおおよそ2倍もの成長を遂げた計算となる。事実、公式の発表によると、過去12ヶ月間で、1日あたりのアクティユーザー数(DAU)は、約2倍の330万人に増加している。iOS版アプリ版のBrave BrowserでBrave Rewardが公開された結果、昨月比で、ユーザー数が27%増加したとの発表している。

  • また、Brave Contents Creator(Brave Browserのユーザーから、直接報酬を受取ることができる仕組み)に登録しているクリエイターの数が、340,000人を突破しており、今後も成長していく見込みとなっている。Braveは現在、 Windows、macOS、Linux、Android、iOSと、52の言語に対応している。今後の国内での動向にも、引き続き注目していきたい。

Section2: ListUp

1. Bitcoin

Bitfinex、Lightning Networkをインテグレート

  • デポジットおよび引き出しをLN介して実施可能に

  • 交換所はネットワークへの流動性提供に重要なポジション

  • 交換所がユーザ資金の中央集中的カストディだとハッカーの最大のターゲット

  • LNがこれを解決。カストディ負担を下げ、ユーザがコントロール可能に

  • LNの特徴は即時性であり、低コストで取引プラットフォームから移動できることはトレーダーや提供者ともにメリット

  • 今後交換所がルーティングノードになっていく可能性も

Bitcoin Optech newsletter#70の和訳リリース

Bitcoinにアカウント機能を導入するLayer 2プロトコル「easypaysy」

2. Ethereum

EthereumのIstanbulアップデートが完了

Istanbulアップデートの技術的説明記事

How DeFi cannibalizes PoS security

  • PoSはステイクすることでネットワークの安全性を維持するインセンティブ

  • レンディング等のDeFiはステイクと別のインセンティブで動くため、ここがネットワークセキュリティの攻撃点になり得ると

Beacon Chain 版の Etherscan

What’s New in Eth2–6 December 2019

3. Bitcoin/Ethereum以外

ChainlinkとEnigma、シークレットスマートコントラクトのユースケースでコラボレーションを発表

  • ともにEEAのTrusted Compute Framework (TCF) ワーキンググループメンバー

  • まずは価格オラクル用いた計算から

BitFuryのエンタープライズブロックチェーンExonum Enterprise

  • Bitcoinブロックチェーンへのアンカリング(トランザクション記録を定期的に格納)によってセキュリティを獲得

Microsoft、Enjinと協業でパブリックチェーンリワード

BLS署名の解説記事

COMSA、COMSA HUBの製品版を正式公開

4. 統計・リスト

●DeFiの概観サイト

5. 論考

3種類のTEE比較

キノコと土管で考えるワイブロ(Why Blockchain)

Blockchainに関する技術力

Q3 2019 Cryptocurrency Anti-Money Laundering Report

6. 注目イベント

Istanbul network upgrade(12/4)

Financial Cryptography 2020(2/10–2/14 at Kota Kinabalu, Sabah, Malaysia)

Workshop on Coordination of Decentralized Finance(2/14 at Kota Kinabalu, Sabah, Malaysia)

Stanford Blockchain Conference (2/19–2/21 at Stanford)

EthCC(3/3–3/5 at Paris)

Hyperledger グローバルフォーラム(3/3–3/6 at Phoenix, Arizona)

EDCON(4/3–4/7 at Vienna, Austria)

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