LayerX Newsletter for Biz (2019/09/23–09/29)

Issue #26

今週の注目トピック

Eisuke Tamotoより

今週のBiz編で先週中国・杭州で行われていたアリババクラウドの年次大会の現地速報レポートがメイン記事となっています。中国のブロックチェーン最新情報が手に入る数少ない記事の一つかと思いますので、キャッチアップにお役立ていただければと思います。

プログラマブル証券の呼称について(再掲)
LayerXは社内において従来「証券トークン(Security Token (略称ST))」と呼んでいたものを「プログラマブル証券」(Programmable Security(略称PS))と定めました。それに伴いLayerXニュースレター内の証券トークンの呼び方もPSに変更いたします。
変更した理由は、「(デジタル化も含めた)ブロックチェーン×証券」で実現できる効果はプログラムの特長によって生まれるものであり、それを反映させたネーミングした方がその意味合いがより認知される、と考えたためです。我々は実現できる効果として以下の二つが主に存在すると考えています。

  • 1:法規制のプログラム化+デジタル化→法準拠の確度向上+管理コスト低減

  • 2:スマートコントラクトによる自動執行→執行にかかる費用&時間コスト削減+複数主体の参加実現

Section1: PickUp

中国・杭州、アリババクラウドの年次大会「Apsara Conference 2019」現地レポート

  • 2019年9月25日から27日の3日間、中国の杭州で開催された、アリババクラウドの年次大会である「云栖大会(Apsara Conference)」に参加した。来場者はおよそ4000名規模と見られ、会場全体に渡り、非常に活気で溢れていた。アリババクラウド本体におけるブロックチェーンの活用に加え、傘下のグループ企業である蚂蚁金服(Ant Financial)におけるブロックチェーン活用事例、その他技術の最新動向について、ご紹介する。

  • 26日午後に行われた「Ant Blockchain Ecosystem」のセッションでは、アリババBaaSの新プロダクト及び今後アリババの目指す方向性について提示された。Wanxiang BlockchainのCEO 肖风(Xiao Feng)氏より、「Decentralized Economy (DeCo): Reshaping the Business」と題して、ブロックチェーンの今後に関するスピーチが行われた。こちらでは、私たちの生きる世界は中央集権型ではなく分散型であり、インターネットが登場して以来「去中心化(= Decentralization)」が進行している旨について述べた後、DeCo(Decentralized Economy)の概念とその歩みについて紹介された。

  • DeCo 1.0は、マイニングに概念によって初めて実現した分散型の経済の時代であり、代表例としてビットコインが挙げられた。つづくDeCo 2.0は、各自がブロックチェーンアプリをデプロイし、スマートコントラクトによって制御される自律分散型の経済活動であるとし、DAOを中心とする世界観について取り上げられた。DeCo 3.0は、DAOに法定通貨の動きを乗せることによって実現するオープンファイナンスの世界観であり、今日目にするDeFi(开放金融)が主な事象として取り上げられていた。そして、今後は「DeCo 4.0」に到達するとして、その展望について紹介された。DeCo 4.0は、異なる背景やステークホルダーを持つ経済圏同士が結びつき、中央集権と非中央集権の経済圏が相互を補い合う世界観であり、インターオペラビリティが鍵になると述べられた。

  • こちらに倣う形で、新プロダクト「ODATS(Open Data Access Trusted Service)」のオープンβアクセス開始について、発表された。ODATSは、クロスチェーンのインターオペラビリティを確保するサービスであり、Hyperledger Fabric、Quorum、Ant Blockchainの3つを、互換性のある単一のコントラクトで制御できるとのこと。Ant Blockchain BaaSは、コンソーシアム管理機能を中心とするBaaS Core、KYCなど別レイヤーのサービスを含めたBaaS Plus等、複数の技術スタックによって構成されており、金融を始めとする領域で既に40以上導入実績があること、そしてパートナーシップを今後さらに拡充していく旨についても、あわせて発表された。

  • 以降の別のセッションでは、中国司法省の「司法链」プロジェクトや、トレーサビリティ、請求書発行の領域におけるブロックチェーン活用の発表が行われた。また、蚂蚁金服のブースでは、サプライチェーンのトレーサビリティサービスとして、「蚂蚁区块链遡源」のプロダクト展示があった。「支付宝(アリペイ)」上からミニプログラムを起動し、実際に商品をスキャンする所を体験できた。会場では、梨や酒など、産地の証明を閲覧する体験が行えた。

  • 複数の事業者をまたいでブロックチェーンの導入を進めようとしたときに、囚人のジレンマ的な状況に陥り、結果としてなかなか実装が進まなくなっている事例は、国内外でも散見されている。一方、強力なトップダウンが機能する世界では、このようなジレンマは難なく打破され、早い段階からステークホルダー全員が利益を享受できるモデルとして、プロジェクトが進められている点が興味深かった。先陣を切ってブロックチェーンの社会実装を進める中国の今後の動向に、引き続き注目したい。

独Daimler、MarcoPoloによるトレードファイナンス取引実施

  • 国外から商品を買い取って輸入する貿易取引を行う場合、物流業者以外にも、銀行・保険会社などの金融機関のほか、税関などの関係機関が関与する。信用状・船荷証券・貿易保険証券など多くの書類のやりとりが必要となるが、従来型の紙ベースの決済だと時間が掛かっている。

  • このほど、ドイツの自動車メーカー大手Daimlerが、ブロックチェーンベースのトレードファイナンスネットワークであるMarcoPolo上で初めての取引(商業取引業務のパイロット版)を行なった(現地プレスリリースはこちら)。取引には、プラント設計や部品組立などを取り扱うエンジニアリング企業Durr社およびその子会社のSchenck社や、バーデン=ヴュルテンベルク州立銀行 (Landesbank Baden-Württemberg (LBBW))、物流業者のLogwin AG社が参加している。

  • 支払いに関して、Daimlerの取引銀行との間で条件付き契約を取り決めておき、発注・納品契約に従って、注文した商品が納品されると、自動的に注文情報がアップロードされ、合意済みの取引データと自動的に照合される。ここで照合が完了すると、取消不可の支払義務が発生する仕組みになっている。今回の取引では、受発注処理に伴う数日かかるプロセスを数分で実行できることが実証され、効率的なデジタル貿易金融プロセスの可能性が確認できた。

  • MarcoPoloは、R3社とTradeIX社が立ち上げたトレードファイナンス基盤であり、Azure上で稼働するCordaにおいて相互決済に必要なデータ処理を行うもの。仏BNP Paribasや独Commerzbankといった欧州主要金融機関が参加する他、最近も米Bank of AmericaのほかMasterCardが参加を発表している。日本からも三井住友銀行・三井物産が参加している。

  • トレードファイナンス分野へのブロックチェーン応用については、今回の「MarcoPolo」以外にも、多くのネットワークが既に稼働開始している(こちらのプレイヤーマップを参照)。例えば「we.trade」には、英HSBCや仏Societe Generaleなどが参加するほか、「Voltron」には、HSBCやParibasの他、みずほフィナンシャルグループが参加しており、当分野における今後の更なるネットワーク拡大・導入効果の発現に期待したい。

スイス証券取引所がPSを利用したプラットフォームのテスト版をローンチへ

  • 傘下のSIX Digital Exchange(SDX)を中心に、以前からPSプラットフォーム開発してきたスイス証券取引所(以下、SIX)は同プラットフォームのパイロットテスト版をローンチしたと発表した。今回のバージョンのプロダクトでは、PS発行機能、PS取引機能とPS預託機能の二つを装備している。

  • 今回のバージョンでは上記3機能のみの実装だが、2020年のQ4でのメインローンチに向けて今後も機能実装を充実させていく見込み。具体的には、決済用コインの導入、トランザクション確認機能の実装を目指している、とのこと。最終的には、証券決済における即時アトミックスワップの実現を行い、カウンターパーティーリスクの解消を目指す。決済用コインの導入はまだ不明確な段階にあるものの、SIX主導の下でスイス中央銀行に対して中銀コインの発行を要求するなど積極的な動きも見られており、現実味を帯びる日も遠くないと推測される。

  • SIXは今後数カ月間でphase2のテスト版をローンチ予定。そのバージョンではカストディ機能を搭載し、投資家が自身のPSと秘密鍵とをプラットホーム上で保管して取引が行えるようになる見込みだ。

Section2: ListUp

(リンクはこちら

1. Regulation : 規制動向(「米下院、FinCENによるブロックチェーン活用研究にむけた法案を可決」など)

2. Crypto Adaptation: 暗号通貨の普及・応用(「Bakkt、現物決済ビットコイン先物取引を開始」など)

3. Decentralized Finance : DEXやトークンなど(「Compound, Fulcrum, dYdX, DDEX , Divineの金利モデル比較考察」など)

4. Programable Security : プログラマブル証券関連(「Securitizeが野村ホールディングスなどから出資へ」など)

5. Financial Institutions : 金融機関による応用ケース(「中国Ping Anのブロックチェーン・フィンテック子会社OneConnect、NY上場との報道」など)

6. Enterprise/Government : 非金融分野の応用ケース(「タイエネルギー公社PTT、Energy Web Foundationと再エネプラットフォーム」など)

7. Startup : 個別プレイヤー・アプリケーション(「GK8、インターネット接続の必要が無しにトランザクション可能なコールドウォレット」など)

8. Articles : 論考(「中央銀行デジタル通貨に関する法律問題研究会」報告書」など)

9. Future Events : 注目イベント

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