LayerX Newsletter for Biz (2019/09/09–09/15)

Issue #24

今週の注目トピック

Eisuke Tamotoより

今週のbiz編pick記事には先日まで開催されていたTel Avivブロックチェーンweekの超速報記事がpickされました。最新情報のキャッチアップとして是非ご活用ください。また、PS分野ではスペイン大手銀行による社債発行プロジェクトが発表されるなど注目ニュースが複数ありました。こちらも合わせてご覧くださいませ。

プログラマブル証券の呼称について(再掲)
LayerXは社内において従来「証券トークン(Security Token (略称ST))」と呼んでいたものを「プログラマブル証券」(Programmable Security(略称PS))と定めました。それに伴いLayerXニュースレター内の証券トークンの呼び方もPSに変更いたします。
変更した理由は、「(デジタル化も含めた)ブロックチェーン×証券」で実現できる効果はプログラムの特長によって生まれるものであり、それを反映させたネーミングした方がその意味合いがより認知される、と考えたためです。我々は実現できる効果として以下の二つが主に存在すると考えています。

  • 1:法規制のプログラム化+デジタル化→法準拠の確度向上+管理コスト低減

  • 2:スマートコントラクトによる自動執行→執行にかかる費用&時間コスト削減+複数主体の参加実現

Section1: PickUp

●Tel Aviv現地レポート:「分散金融アーキテクチャにむけたマルチステークホルダーワークショップ」が開催

  • イスラエルTelAvivで開催されるScaling Bitcoinに先立ち、「Decentralized Financial Architecture Workshop for Multi-stakeholders」が開催された。これは、G20でも強調された「分散金融アーキテクチャーにむけマルチステークホルダーで集まる必要性」を受けたものであり、アカデミア・規制当局・ビジネスの三位一体での言説が展開されたので、その要旨をまとめる。

  • 冒頭、ジョージタウン大学の松尾氏から「なぜマルチホルダディスカッションが必要か・何がG20で討議されたか」について紹介された。SatoshiNakamotoペーパーにはFiatとの交換システム記述がなく、Bitcoinエコシステムに閉じたものが想定されていたこと、暗号通貨交換所についての明確な統一的定義がないこと等を指摘した上で、技術的にも、スケーラビリティ・セキュリティ・トラストモデルなどの観点から今後品質保証が重要であると述べた。こうなった背景として、インターネットのときには研究・インプリ・標準化をへてビジネスへ進んだのに対して、Bitcoinの場合は技術が成熟する前にビジネスが開始されている点を挙げた。そのため、規制・ビジネス・エンジニアというステークホルダーがいる中にあって、規制とエンジニアの間に共通言語が無くコネクションもほぼ無いのが問題であり、今後は暗号・ネットワーク・インセンティブデザインなど学際的議論が必要と主張した。その上で、G20にさきがけてFSBから発行された分散金融技術に関するレポートでも述べられているように、これからの分散金融技術の時代において、マルチステークホルダー協調は金融安定において重要な鍵となると締めくくった。

  • 規制当局サイドの見方としては、金融庁の高梨氏が「ブロックチェーンベースの金融の規制・ガバナンスの実装」につき登壇した。ここで述べる意見は個人的なものであり所属組織としてのものではないとした上で、規制の目指すゴールは、安定性維持・消費者保護・金融犯罪防止であると触れた上で、分散型金融の特徴を以下のように整理した。大別すると、分散(規制すべき介在人がいない)・自律(サービス停止できない)・匿名(追跡)・改ざん困難・グローバル(規制境界)・オープン(責任あいまい)の6点である。このように新しいエコシステムが形成されていく中にあって、規制単体ではゴール到達は難しいことから、だからこそマルチステークホルダー議論が重要であると述べた。その上で、現状のマルチステークホルダーの課題として、エンジニアは規制当局を敵視し、規制当局はオープンソースエンジニアが考えていることを理解するのが難しいことに触れた。このように透明性が欠如している環境を踏まえ、エンジニア・技術との関係性についても、「エンジニアは当局が全てを止めると思っているが、当局はそんなことは考えていないのでは」「当局は技術を規制しようとしておらず、技術に関心をはらっており、技術者やコミュニティと会話していくべき」とし、他のステークホルダーとのコミュニケーションを拡大していく姿勢である点を強調した。

  • ビジネスサイドの見方としては、プライバシー技術Mimblewimbleを用いた暗号通貨である「Beam」のAlexander Zaidelson氏が「コンプライアンスと機密性の共存」について紹介した。 Beamの概要として、Mimblewimbleをベースとして、現在のステートのみをブロックチェーンに格納するため、全体のサイズをBitcoinの1/3–1/10に収めることができる点に触れた上で、「プライバシーとオプトインでの監査性を組み合わせている点」が特徴であるとした。後者について具体的には、個人ユーザや小規模取引のアカウントはフルプライバシーに振り向けることができる一方、ビジネスユースや大規模取引アカウントについては、アイデンティティを持ちKYC認証を行うビジネスウォレットを用意して監査可能とすることによって、秘匿性・スケーラビリティ・コンプライアンスを共存することが可能であると説明した。このように、ビジネスウォレットを導入し、監査人へ鍵をわたすことによって、取引にかかるアクティビティをモニタリング可能とすることができるようになっているが、導入するかはユーザー次第であり、その主権は大事にすべきと強調した。

  • アカデミア・規制当局・ビジネスの見方を俯瞰すると、当局としては、詳細を知られることなしに、プライバシーを明かすことを最小限に、犯罪を特定できるようになるのが「理想」だ。そうしたソリューションを見出していく上で、規制当局と、事業側・エンジニア側とのコミュニケーションが重要な点も、理解できる。とはいえ、現時点では、現場の事業側・エンジニア側と、デフォルトで犯罪検知できるようにすることを望む当局との間で、越えがたい「溝」がある様子を窺えた。今後にむけて、中長期目線で方向性を見出し、特定の当局・事業者の言説として捉えられないためにも、今回のような形で、当局・事業・エンジニア・アカデミアなどマルチステークホルダーの連携の意義が十二分にあると考える。

スペインの大手銀行グループ「サンタンデール銀行」がEthereumを利用して社債の発行を実施

  • スペインの大手商業銀行サンタンデール銀行がNivaura社と協力し、public etherum上で社債を20M$分発行したと発表した。今回のプロジェクトは社債をEthereum上でPSとして発行しただけではなく、決済手段のFIATもERC20としてステーブルコインとして発行させた上でDvP (Delivery versus Payment) 決済を実現させたという点が注目される点である。ERC20を社債PS発行時までエスクローコントラクトにエスクローさせ、期限到達時もしくはPSもエスクローコントラクトに送付された時に両者が互いの送付先に送付される仕組みになっている。

  • このERC20トークンを利用して投資時のDvP決済を実現することに加えて社債の定期利払いにおいてもERC20トークンが利用される。これにより利払い時の時間的、金銭的コストの削減を目標としている模様だ。ただ、ERC20とFIATの結びつけは銀行口座の残高に基づいたものとなっており、入金と出金においては通常の銀行入出金を行う必要がある。

  • 今回の実証実験では、参加企業は全てサンタンデール銀行グループ傘下の企業となっている。今回のスキームでは、Santander Security Servicesという信託銀行が各秘密鍵を管理し、この企業経由でPSとSCのトランザクションが走る仕組みとなっている模様だ。現在はグループ内プロジェクトの段階であるが今後どのようにしてグループ外企業を巻き込んでいくのか、その場合の技術設計スキームはどのように変化していくのか、注目していきたい。

  • また、今回の実証実験で技術参画したNivaura社は同様のDvP決済スキームをイギリスのサンドボックス制度を利用して実証実験を以前に実行している。サンタンデール銀行は今年初めに自社cvcからNivaura社に投資も実行しており、Nivaura社の過去の実証知見を利用して今回のプロジェクトに繋げたもと考えられる。両者のblockchain活用に向けた取り組みに今後も目が離せない。

暗号資産取引所「Gemini」がカストディサービスをローンチ

  • 2019年9月16日、仮想通貨取引所のGeminiが、カストディサービスである「Gemini Custody」のローンチを発表した。Bitcoin, BitcoinCash、Ethereum、Litecoin、Zcashと、ERC20トークンを含む、計18種類の通貨に対応予定となっており、今後も拡大していく見込み。

  • Gemini Trust Companyは、ニューヨーク州金融サービス局より、カストディ事業者としての認可を受けている。公式発表によると、同社の安全性に対する証左として、内部統制とセキュリティにおける監査基準である、SOC2 type1をクリアしていること、FIPS 140–2 Level 3を満たしているHSMを用いたオフラインストレージに、アクセスコントロールとマルチシグを施した上で、地理的な分散を図っていること等を挙げている。

  • また、同社では、8月中旬にサイバーセキュリティ企業Tanium社の元CSO David Damoto氏を同社CSOに、9月4日には、元Morgan Stanleyの執行役員であるNoah Perlman氏をコンプライアンス統括責任者として迎え入れている。

  • 更に、9月5日には、「Gemini Clearing」と呼ばれる、OTCサービスについても、ローンチの発表を行ったばかり。CoinMarketCapの取引所の24h 取引高ランキングにおいて、Geminiは執筆時点でTop100圏内に入ってはいるものの、上位にはBinanceなどの大手の名前が並んでいる。取引所による取引高の水増し操作が報じられているため、一概にこの数字を指標とすることはできないものの、既存取引とは別軸で新たにサービスを立ち上げる等、積極的な攻めの姿勢を見せている同社の今後について、引き続き注目していきたい。

Section2: ListUp

(リンクはこちら

1. Regulation : 規制動向(「米FRB議長、消費者は中銀デジタル通貨を求めていないとの見方示す」など)

2. Crypto Adaptation: 暗号通貨の普及・応用(「Libra、裏付け資産は米ドル・ユーロ・日本円・英ポンドで人民元は含まれない可能性」など)

3. Decentralized Finance : DEXやトークンなど(「Bancor、メジャーアップデートを発表」など)

4. Programable Security : プログラマブル証券関連(「RegA+を利用したトークンオファリングでblockstackが23Mを調達」など)

5. Financial Institutions : 金融機関による応用ケース(「MastercardR3とブロックチェーンベースの海外送金ソリューション開始へ」など)

6. Enterprise/Government : 非金融分野の応用ケース(「カタルーニャ政府、ブロックチェーンベースの自己統治型アイデンティティプロジェクト発表」など)

7. Startup : 個別プレイヤー・アプリケーション(「Yield ProtocolyTokensを発表」など)

8. Articles : 論考(「ムーディーズブロックチェーンが証券化に寄与する旨のレポートを発表」など)

9. Future Events : 注目イベント(「b.tokyo2019(10/2–10/3 at Tokyo)」など)

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