LayerX Newsletter for Biz (2019/08/19–08/25)

Issue #21

今週の注目トピック

Satoshi Miyazaki より

今週は、Corda向けのスマートリーガルコントラクトテンプレートの発表、Tetherの人民元ステーブルコイン「CNHT」に関する発表、Securitizeへのトランスファーエージェント認可、世銀のブロックチェーン債発行のニュースがありました。大きいプレイヤーがそれぞれ時間をかけて仕込んできた、大型プロジェクトに関する発表が相次いだ一週間でした。

プログラマブル証券の呼称について(再掲)
LayerXは社内において従来「証券トークン(Security Token (略称ST))」と呼んでいたものを「プログラマブル証券」(Programmable Security(略称PS))と定めました。それに伴いLayerXニュースレター内の証券トークンの呼び方もPSに変更いたします。
変更した理由は、「(デジタル化も含めた)ブロックチェーン×証券」で実現できる効果はプログラムの特長によって生まれるものであり、それを反映させたネーミングした方がその意味合いがより認知される、と考えたためです。我々は実現できる効果として以下の二つが主に存在すると考えています。

  • 1:法規制のプログラム化+デジタル化→法準拠の確度向上+管理コスト低減

  • 2:スマートコントラクトによる自動執行→執行にかかる費用&時間コスト削減+複数主体の参加実現

Section1: PickUp

Accord Project、ClauseとR3がCorda上で約束手形のスマートリーガルコントラクトテンプレート発表

  • 法的合意をデータやスマートコントラクトコードという形で表現し、契約文書がソフトウエアにコネクト可能なものとする取り組みが随所で見られるようになっている(=スマートリーガルコントラクト)。企業システムと一体となってトランザクションを自動実行するなど契約義務を遂行するとともに、ブロックチェーン上に稼働結果を記録することで監査性・透明性を確保できる点が便益とされる。

  • Accord Projectは、こうしたスマートコントラクトを法的拘束力ある形で実装すべく、オープンな仕様や参照実装を定義する取り組み。Linux Foundationの取り組みの一角として、技術中立でスマートリーガルコントラクトを可能とすることを通じ、企業むけにスマートリーガルコントラクトの普及を促進しようとしている。現在、Accord Projectは、Java VMサポートを発表し、R3 Corda上の開発に利用可能とすることを通じて、スマートリーガルコントラクトを企業ブロックチェーンユーザへ提供することを目指している。

  • Clauseは、スマートリーガルコントラクトのプレイヤーであり、「Ciceroテンプレートシステム」を用いて、リーガルテキストはスマートコントラクトコードに結合され、Cordaプラットフォーム上で稼働することができる。ClauseおよびR3は、ともにAccord Projectのメンバーであることから、このたびJVM上のスマートリーガルコントラクト機能を示すべく、Cordaむけに「約束手形テンプレート」を発表した。

  • 一般に約束手形は、売り手に対する支払い義務を示すとともに、決済に際する支払い条件を特定するものであり、定義された期日に売り手はキャッシュフローを手にすることができる。今回スマートリーガルコントラクトとして実装した約束手形は、手形発行や支払いに関する法的条件をコードとして表現した上で、Corda台帳上に記録し、参加者双方の鍵・署名を通じて決済に使われるもの。サンプルとして手形テンプレートを提示しており、これを参照することによって、「どのように約束手形の合意がCordaネットワーク参加者で共有されるのか」「法的文書から抽出された条件・データがどのようなコードで契約義務を履行するのか」を確認できるようになっている。

  • 約束手形は、貿易・サプライチェーンファイナンスなどの商取引において一般的なものであり、契約義務の履行を分散台帳上で実行する取り組みとして有用と考えられる。このケースのように、プログラマブルな形でデジタルマネー・デジタルアセットを流通していくことによって商取引をより円滑にしていく動きに、引き続き注目していきたい。

Tether、オフショア人民元にペグされたステーブルコイン、「CNHT」の近日ローンチ予定が明らかに

  • 2019年8月21日、USDTの発行で知られるTetherが、近い将来、オフショア人民元とペッグされたステーブルコイン「CNHT」の発行を予定していることが明らかになった。Tetherの姉妹会社の仮想通貨取引所である、Bitfinexの株主として知られるZhao Dong(赵东)氏が、仮想通貨メディアChainNewsに向けて語った。また、Coindeskによると、リザーブとなる人民元はベルギーの銀行で管理される見通しであると報じられている。

  • 加えて、Zhao氏自身がファウンダーを務める、暗号資産ウォレットとレンディング企業であるRenrenBitが、CNHTに対して、最初に投資を行う予定であることについても、明らかになった。Zhao氏は、中国最大級の暗号資産OTCトレーダーであり、アーリーステージのブロックチェーンプロジェクトに投資を行うVC「Dgroup」「Dfund」のファウンダーとしての活動も知られている。

  • 中国の人民元は、中国本土内で流通するオンショア人民元(CNY)と、中国本土外で流通するオフショア人民元(CNH)に分かれている。両通貨の市場は分かれており、それぞれ異なる規制や、為替レートが適用されている。Tetherではこれまで、米ドルペッグのUSDTと、ユーロペッグのEURTが発行されていたが、今回新たにCNHTが加わることで、Tetherバスケットの米ドル依存が、長期的に緩和していくと見られている。

  • 今月上旬、中国人民銀行(People’s Bank of China)の決済部門副所長であるMu Changchun氏が、もう間もなく自国のデジタル通貨を発行できる見通しであることが、Bloombergの報道で明らかになっている。中国の中央銀行として、本件に関して中国人民銀行がどのような反応を示すか、注目が集まることが予想される。

Securitize、SECからトランスファーエージェントとして認可される

  • 2019年8月21日、セキュリティトークン発行プラットフォームのSecuritizeが、SEC(米国証券取引委員会)からトランスファーエージェントとして認可を受けたことを発表した。ブロックチェーン系企業として、トランスファーエージェントの認可を得られたのは、今回が初めての事例となる。

  • トランスファーエージェントは、証券の移転記録の管理や、配当関連の業務を行う他、発行体と投資家間のコミュニケーションなども担う事業者であり、証券の流通において重要なポジションを担っている。今回、Securitizeは、SECより正式に認可を受けたことで、同社のプラットフォーム上にて発行された証券は、SECの認可を受けたATS(代替取引所)上にて、取引できるようになる。これらのATSには、tZEROや、Open Finance Network、Sharespostなど、セカンダリ市場のプレイヤーも含まれる。

  • 今回、Securitizeが当局に審査を依頼してから、正式に認可が降りるまで、わずか10日ほどしかかかっていないことが明らかになっている。こちらに関して、Securitizeのチームがスマートコントラクトを用いた移転記録の管理について、半年以上に渡ってSECと認識をすり合わせてきた結果であることを、Coindeskが報じている。

  • これまで、同社のプラットフォーム上で、11のデジタル証券が発行され、 それらの時価総額合計は約200万ドル規模になる。うち5銘柄については、SEC認可のATS上にて取引されている。今回、認可が降りたことを受けて、同社は現在、1件あたり通常$150ほどかかる証券の移転記録作成を、無料で行うとしている。今後、セキュリティトークンの発行は増えていくと考えられるが、セカンダリ市場における流通量の動向にも注目していきたい。

世界銀行が二度目のブロックチェーン債の発行を実施

  • 世界銀行がブロックチェーンを利用した二度目の債券(カンガルー債)発行を実施し、5千万豪ドル(3380万米ドル相当)の調達を成功させたと発表した。世界銀行は昨年も同時期に同様の債券をブロックチェーン上で発行し、1億1千万豪ドルの調達を成功させた経緯をもつ。

  • Commonwealth Bank of Australiaが発行を主導しており、彼らの技術ラボのCommBank’s Blockchain Centre of Excellenceがブロックチェーン技術の提供をしている。具体的にどういった技術設計で債券が発行されたのかは不明であるが、プライベートイーサリアムをベースに構成されたと報じられている。技術監査にはMicrosoftが参画している。

  • 今年の5月には昨年発行したブロックチェーン債のセカンダリー取引が、TD Securitiesによるマーケットメイクのもとで成功したとのニュースも報じられている。また、昨年のブロックチェーン債は譲渡だけではなく期中管理もブロックチェーンを利用して行われており、今回の発行により、債券発行->期中管理->譲渡->次債券発行のサイクルが一周したことになる。

  • 世界銀行とCommonwealth Bank of Australiaによるブロックチェーン債発行プロジェクトは2017年1月に初のプロトタイプが公表されて以来、2年半以上の取り組みである。長い準備期間と、実運用を一周まわしたことによる知見が更に今後どのように活かされるか注目するとともに、技術により具体的にどのようなメリットが生まれたのか詳細な情報が今後公開されていくことにも期待したい。

Section2: ListUp

(リンクはこちら

1. Regulation : 規制動向(「米国国務長官、暗号通貨はSWIFT同様に規制されるべきと表明」など)

2. Crypto Adaptation: 暗号通貨の普及・応用(「コインチェック、IEO検討を開始した旨を発表」など)

3. Decentralized Finance : DEXやトークンなど(「Tether、オフショア中国元(CNT)と連動したStablecoin”CNHT”」発行を計画との報道」など)

4. Programable Security : プログラマブル証券関連(「Black Manta Capital PartnersがBaFinよりライセンス獲得」など)

5. Financial Institutions : 金融機関による応用ケース(「世界銀行、Ethereum上で2度目のブロックチェーン債を発行」など)

6. Enterprise/Government : 非金融分野の応用ケース(「カンボジアのプノンペン、スマートシティでブロックチェーンベースのデジタルパスポート」など)

7. Startup : 個別プレイヤー・アプリケーション(「ALIS、ライセンストークン発行サービスを発表」など)

8. Articles : 論考(「豪州Commonwealth BankによるSmartMoney(プログラマブルマネー)用いたデータアナリティクスレポート」など)

9. Future Events : 注目イベント

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