個人情報保護委員会による仮名加工情報・匿名加工情報に関する事務局レポート/健康・医療データ利活用基盤協議会の模様、データワイズ社のGPS人流商圏分析ツール
LayerX Labs Newsletter (2022/03/23-03/29) #148
今週の注目トピック
Takahiro Hatajima(@th_sat)より
個人情報保護委員会による仮名加工情報・匿名加工情報に関する事務局レポートの概要を紹介します。
あわせて、データ利活用最前線として、健康・医療データ利活用基盤協議会の模様や、データワイズ社のGPS人流商圏分析ツールなどを紹介します。
Section1: PickUp
●個人情報保護委員会、仮名加工情報・匿名加工情報に関して事務局レポートを公開
3月30日開催の「第204回 個人情報保護委員会」において、「個人情報保護委員会事務局レポート:仮名加工情報・匿名加工情報」(制度編・事例編)が発表された。この事務局レポートは、仮名加工情報及び匿名加工情報の特徴や加工方法、取扱い上の留意点について事業者等の理解を深め、両情報の適正な利用を促進するために作成されたものだ。
個人情報保護委員会では、2017年2月には「事務局レポート:匿名加工情報」を公表し、2015年の改正個人情報保護法によって新設された匿名加工情報を作成する際の具体的な加工方法等を、事例を交え紹介していた。そしてこのたび、令和2年改正個人情報保護法により仮名加工情報が新設されたことに伴って、ガイドラインやQ&Aにおける仮名加工情報関係の記述を改めて整理するとともに、具体的な加工方法や、仮名加工情報を取り扱う場合の留意点等について加筆がなされた。
仮名加⼯情報の制度は、個⼈情報や匿名加⼯情報、統計情報と⽐較して、以下の 3 つの特徴がある。
第⼀に、仮名加⼯情報は、「変更前の利⽤⽬的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超える利⽤⽬的の変更」を、本⼈の同意なしに⾏うことができる。
第⼆に、仮名加⼯情報は、匿名加⼯情報や統計情報と⽐べて、個⼈ごとの特徴を詳細に残した加⼯を⾏うことができる。
ここで、仮名加⼯情報は、「他の情報と照合しない限り特定の個⼈を識別することができないように個⼈情報を加⼯」すればよく、匿名加⼯情報のように、「特定の個⼈を識別することができないように個⼈情報を加⼯」し、かつ、「当該個⼈情報を復元することができないようにする」ことまでは求められていない点がポイントである。
なお、「特定の個⼈を識別することができない」とは、⼀般⼈の判断⼒⼜は理解⼒を基準として判断されるものであり、⼀般⼈において想定されないような⼿法や、⼀般的に⼊⼿できないような外部情報を利⽤したりする等のあらゆる⼿法によって特定や復元を試みたとしてもできないというように、技術的側⾯から全ての可能性を排除することまでを求めるものではない、としている。
第三に、仮名加⼯情報は、「他の情報と照合しない限り特定の個⼈を識別することができないように個⼈情報を加⼯」したものであり、万が⼀漏えい等が⽣じた場合であっても、加⼯前の個⼈情報が漏えい等した場合と⽐べると、加⼯により本⼈の権利利益が侵害されるリスクが相当程度低減されていることから、漏えい等が⽣じた際の報告等を⾏う必要がない。
出典:https://www.ppc.go.jp/files/pdf/220330_shiryou-4-2.pdf
今回の事務局レポートの「事例編」では、従来の匿名加工情報に関する事例に加え、仮名加工情報に関する事例が追加されている。仮名加⼯情報の利活⽤による事例として、例えば、以下の2つのケースを想定している。
① 事業者が持つ「⼀つ」のデータベースに含まれる個⼈情報を仮名加⼯情報に加⼯し利⽤⽬的を変更するもの(事例1)
② 事業者が持つ「複数」のデータベースに含まれる個⼈情報からそれぞれ仮名加⼯情報を作成し利⽤⽬的を変更した上で同⼀の個⼈ごとに突合して利⽤するもの(事例2)
前者の事例1では、オンライン通販事業を営む事業者が、オンライン通販事業により取得した購買情報の利⽤⽬的を変更し、新規事業である実店舗事業の出店計画を検討するために利⽤することを⽬的に、以下のように仮名加⼯情報を作成している。
出典:https://www.ppc.go.jp/files/pdf/220330_shiryou-4-3.pdf
後者の事例2では、実店舗事業とオンライン通販事業を営む事業者が各事業で取得した異なる利⽤⽬的が特定された複数のデータベースを構成する個⼈情報を、仮名加⼯情報に加⼯し、利⽤⽬的を変更した上で突合し、購買履歴の分析のために利⽤している。
出典:https://www.ppc.go.jp/files/pdf/220330_shiryou-4-3.pdf
仮名加⼯情報・匿名加⼯情報の制度は、個⼈情報及びプライバシーの保護を前提とした上で、⺠間部⾨に存在する有⽤性の⾼い個⼈に関する情報について、「仮名加⼯情報」は利⽤⽬的の変更等を、そして「匿名加⼯情報」制度は第三者提供や⽬的外利⽤等を可能とする制度だ。この制度が適切な形で幅広く⺠間部⾨に利⽤されることにより、消費者やサービス利⽤者の信頼を維持した形で安全に個⼈に関する情報等の流通が促進され、新たな技術やサービスの創出につながることが期待されている。
また、「匿名加⼯情報」及び「仮名加⼯情報」に係る規律が、⾏政機関、地⽅公共団体の機関、独⽴⾏政法⼈等及び地⽅独⽴⾏政法⼈にも適⽤されることとなっていることから、⾏政機関等においても同様に、個⼈に関する情報の適切な利活⽤が促進されることが期待される、として本レポートは結ばれている。(文責・畑島)
●データ利活用最前線:最近のデータ利活用に関係するニュースの紹介
「次世代医療基盤法」見直しの検討状況に関して、匿名加工基準やゲノムデータの扱いについて、挙がった意見がまとまっている。
本WGでは、「匿名加工医療情報の利活用」「多様な医療情報の収集」「認定事業者による確実な安全管理措置の実施」について、議論される予定。
別途、厚労省で「医療分野における仮名加工情報の保護と利活用に関する検討会」が設けられ、第1回検討会が開催されている。
三井物産 米TriNetX社とグローバル医療データサービス事業で協業契約締結 治験効率化やデータ分析等
三井物産は3月28日、米・TriNetX,LLC社(本社・マサチューセッツ州)と匿名化した電子カルテ情報を活用したグローバル医療データサービス事業で協業契約を締結したと発表した。
TriNetX社は、北米、南米、欧州、中東、アフリカ、アジア太平洋地域の各地域を軸にグローバル医療データサービス事業で急成長してきた。
三井物産は今回の協業契約を踏まえ、TriNetX社のプラットフォームを日本の医療機関と共有させ、治験参画機会の増加や臨床研究へのデータ活用、経営効率化に貢献する。
なお、三井物産は中期経営計画2023でヘルスケア・ニュートリション領域をStrategic Focusの一つと位置付けており、「Wellness All Mitsui」(WAM)という健康事業群の確立を進めている。今回の協業契約は医療接点を軸としたDXソリューション拡大の具体策の一つと位置付けている。
データワイズ社、GPS人流商圏分析ツール/「Datawise Area Marketer」階層判別機能を実装
ドコモGPS統計データを活用し、エリアマーケティング・商圏分析サービスを行うデータワイズは4月、人流分析ツール「Datawise Area Marketer」に、階層判別機能を追加する。
この機能追加により、例えばビルに入居している事業者など、GPS統計データによる来訪者数・属性分析を利用できる顧客の業種・業態が大きく広がると予想している。
パナソニックの位置情報データ化ソリューション「POSITUS」、iPhoneをビーコンとして利用可能に 〜 Microsoft Outlook/Teamsとの連携でコミュニケーションを支援
今回の機能強化では、iPhone専用アプリケーションを提供し、人やモノの検索、社員の出社率・エリアの利用状況を、従来のWebブラウザに加え、iPhoneからでも簡単に把握できるようにした。
人の所在把握としては、従来の位置情報を検索する機能に加え、Microsoft 365との連携により、メンバーの所在・予定・ステータスを一覧で表示する「所在表示ボード」を提供開始する。この所在表示ボードからは、ワンクリックでMicrosoft Outlook/Teamsでメールやチャットを開始できるため、コミュニケーションの効率化にも繋がるとしている。
内閣府|令和3年度 貧困状態の子供の支援のための教育・福祉等データ連携・活用に向けた調査研究 報告書
子どもの貧困対策の基本的な方針として、支援が行き届いていない、又は届きにくい子供・家庭に配慮して対策を推進することや、市町村において、福祉や教育等の取組の過程で得られた個別の子供の状況に関する情報を活用して、支援を要する子供を広く把握し、効果的な支援につなげていくことなどが盛り込まれた。
令和3年4月から、内閣府では、文部科学省及び厚生労働省と連携しながら、市町村等にある福祉や教育等に係る個別の子供やその親の情報を活用し、顕在化した貧困状態にとどまらず、潜在的に支援が必要な貧困状態にある子供やその親を広く把握するとともに、把握した子供やその親に対し、可能な限り早期に、アウトリーチ型(プッシュ型)で、行政に加え、NPO 等が運営する地域にある学習支援・居場所を始めとする必要な支援につなげていくためのデータ連携・活用のあり方について検討している。
先行事例として、箕面市・柏市・府中市・戸田市・つくば市の取り組みを整理している。
LayerX Labsでは、次世代プライバシー保護・セキュリティ技術Anonifyの正式提供に向けトライアルパートナーの募集を開始、合わせて公式ウェブサイトを公開しました。
「Anonify」の公式ウェブサイトはこちら
Section2: ListUp
1. プライバシー・セキュリティとデータ利活用
●米EU、個人データの移転ルールで基本合意
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR25D4D0V20C22A3000000/
●米国と欧州委員会、大西洋横断データ・プライバシー・フレームワークを発表
●欧州ENISA(欧州連合サイバーセキュリティ機関)によるヘルスケアデータ保護にむけた仮名化デプロイのケーススタディ
https://www.enisa.europa.eu/publications/deploying-pseudonymisation-techniques
●クレカ情報流出止まらず 「中小企業、他者任せ禁物」: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC220D20S2A320C2000000/
●総務省|「カメラ画像利活用ガイドブックver3.0」の公表
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban18_01000152.html
●個人情報保護委員会|令和4年度 個人情報保護委員会活動方針
https://www.ppc.go.jp/files/pdf/4_katsudouhoushin_gaiyou.pdf
https://www.ppc.go.jp/files/pdf/4_katsudouhoushin.pdf
●総務省|改正個人情報保護法を受けた郵便事業分野・信書便事業分野における個人情報保護に関するガイドライン等の案に対する意見募集の結果
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu14_02000116.html
2. 今週のLayerX
●LayerX、ポートレート写真撮影のひみつ
https://note.layerx.co.jp/n/n2e398f295059
●40→90名組織拡大期のスタートアップカルチャー浸透ポイント3つ
https://note.com/uchiken_lx/n/n3aa99925515c
●三井物産デジタル・アセットマネジメント「不動産のデジタル証券 譲渡制限付草津温泉 湯宿季の庭・お宿木の葉」のIRサイト
https://ir.alterna-x.com/ir002/
●デジタル証券公募2号ファンド資金調達完了及び運用開始のお知らせ|三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社 〜 温泉旅館を裏付資産とするデジタル証券ファンドが稼働
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000056997.html
●バクラク請求書&電子帳簿保存がJIIMA「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証」を取得。電子帳簿保存法対応を強化
https://bakuraku.jp/news/release/20220330_jiima
●#41 〜maasaが聞く〜個人の集団からチームに変化するセールスチームの今【ゲスト:セールスチームgunchanさん】 - LayerX NOW! | Spotify でポッドキャスト
●LayerX 、プライバシー保護技術に関する共同研究をリクルートと実施
https://www.excite.co.jp/news/article/Prtimes_2022-03-29-36528-122/
●EMとHRは地続きだった。エンジニア出身の私がLayerXのHRに向き合い感じていること|serima|note
https://note.com/serima/n/n9b33a4420936
●なぜ、私はそれでもLayerXなのか?|Yuri Ito(いとゆり)|note
https://note.com/yuriueorange/n/n9f1778433681
●バクラク請求書アップデート〜freee会計ユーザーの初期セットアップがより簡単に〜|LayerXのプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000121.000036528.html
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